アンケート調査

カスタマーハラスメントが労災認定対象に 被害経験は「ある」51.6%

更新日:

しゅふJOB総研

2023年から労災の認定基準に「カスタマーハラスメント」が追加されました。

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先、施設利用者などから受ける著しい迷惑行為や嫌がらせのことを指しています。

職場の上司などからのハラスメント行為に耐えるパワハラのように「顧客だから」「お客様だから」と優越的な関係を背景に行われるハラスメントでは、心理的負荷が高く、精神的につらいものです。

飲食店や小売の接客販売など対面のみならず、コールセンター、医療の現場、公的機関など場所を問わずに発生しうる問題ですが、カスタマーハラスメントを受けた=労災認定になるのでしょうか?

仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層の実情や本音を探る調査機関『しゅふJOB総研』が独自に行ったアンケート調査から、カスタマーハラスメントについて考えてみましょう。リアルな声や課題点も見えてきました。また、労災に関わる問題として専門家の方にお話を伺いました。

 

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カスタマーハラスメントとは

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先、施設利用者などから受ける著しい迷惑行為や嫌がらせのことを指しています。例えば

・コンビニの酔った客が来店し、店員を殴る蹴るなどをした。

・店舗に来て大声で怒鳴りながらクレームを言い、理不尽な謝罪を要求した

・些細なミスについて「いますぐ来い」と呼び出す、「土下座しろ」「お前の代わりなんかいくらでもいる」「辞めてしまえ」など執拗に過度な暴言を言う

・クレームに対し値引きや金品・金銭の要求をされる

などがあります。すでに暴力行為が含まれていますが、さらに「家族がどうなってもいいのか」「家に火をつけるぞ」などの脅迫、拉致などの言及に至る場合もあります。

カスタマーハラスメントは仕事において受ける心理的負荷が高いものとされています。

「業務による心理的負荷評価表」によると、業務による心理的負荷について

「弱」日常的に経験するもの、一般に想定されるもの

「中」経験の頻度は様々だが弱よりも心理的負荷があるものの強い心理的負荷とはみとめられないもの。暴行を受けても治療を要さない程度、行為が反復・継続していない場合

「強」治療を要するほどの暴行などを受けた、反復・継続するなど執拗に受けた場合、など

一般的に想定されるもの、経験の頻度なども加味されるようですが、実際にカスタマーハラスメントを受けたことがあると認識している方はどの程度いるのでしょうか?

 

いままでカスハラの被害者になったことが「ある」51.6%

これまでの経験の中でカスハラの被害者になったことはありますか?という設問に対し「何度もある」22.1%「一度はある」29.5% と回答が集まっています。

 

これまでカスハラの加害者になったこと「ある」6.8%

これまでの経験の中で、カスハラの加害者になってしまったことはありますか?という設問に対し「何度もある」1.3%、「一度はある」5.5%となっています。

特に「わからない」18.8%の回答もあり意図的でない限り「自分がカスハラをしたかどうか」の判断は難しいのかもしれません。

 

カスハラの被害者になったことがある人が、加害者になった割合

カスハラの加害者になった経験を見てみると、被害者経験がある人の方が「カスハラ加害者になった経験がある」と回答した比率、被害者経験がない人の8倍近くになっています。

ここには「この行為はカスハラにあたる」と明確な線引きがないゆえの認識の差が生まれているかもしれません。

 

カスハラと感じる行為「大声で怒鳴られたり罵倒されたりする」74.7%

あなたはどのような行為を受けるとカスハラだと感じますか?という問いに対し、最も回答が多かったのは「大声で怒鳴られたり罵倒される」74.7%です。

次いで「長時間しつこく問いただされる」72.2%、「暴言をはかれる」70.2%、「無理難題をつきつけられる」68.4%、「威嚇されたり脅迫される」68.3%、「土下座の共用などの辱めを受ける」65.5%と続きます。

 

カスハラと感じる行為ランキングTOP5

 

 

フリーコメントより

アンケートに回答された方から寄せられた声を見てみましょう。

◇寄せられたフリーコメントより抜粋(年代:雇用形態)

・カスタマーサポートは、商品やサービスに関してお客様のご要望や苦情などお困り事をお伺いして対応するお仕事のため、どこまでが許容範囲なのか線引きが曖昧な場合が多々あると思います。それでも脅迫、辱め、暴力を受けた場合は、許容範囲を越えたカスハラと思います(40代:今は働いていない)

・上司が部下を守る姿勢を見せることが必要です(50代:派遣社員)

・カスハラが増えているのは分かりますが、最近では商品や店員に関しての真っ当なクレームも「カスハラ」と片付けてしまうサービス提供側も増えていると思います。正式な線引きをもっとメディアなどで頻繁に周知する必要があるかと思います(50代:フリー/自営業)

・窓口などで大声で強い言葉で職員に発言しているのを見たことがあるのですが、どの時点で警察に通報すればいいのかなと感じたことがありました(40代:契約社員)

・目の前で、こちらが用意した書類をバラバラに破かれた(40代:今は働いていない)

・まだ学生の時接客業のバイトをしていた時何度も怒鳴られた。当時はなぜあんなに怒るのかがわからなかったし、怒りの内容も理解出来なかったが、今思えば、お客が若いバイトを下に見ていいと思われていただけ(30代:パート/アルバイト)

・電話でのカスハラ経験はありますが、その時はひたすらお話しを聴き、申し訳ないという気持ちを心からお伝えするということを心掛けました(50代:今は働いていない)

・理不尽な要求など正当性のないカスハラは最早犯罪なのでどんどん警察などに通報すべきだと思う。同時にカスハラがあった際に従業員を守ってくれない上司/会社は淘汰されて欲しい(40代:SOHO/在宅ワーク)

・言いがかりや明らかに納得し難い要求には、毅然とした態度で接客して良いと思う(60代:今は働いていない)

・お客様は神様ではないということを幅広い年代に理解してほしい(50代:派遣社員)

・カスハラの加害者を作らない様にお客様にはきちんとした接客を心がける(50代:今は働いていない)

・フォローアップ体制がしっかりしていると安心して働けます(50代:パート/アルバイト)

・私の場合では、会社の対応が悪く、お客様の言い分はもっともなのに、間に挟まれた結果、暴言や長時間の罵倒に繋がるケースがほとんどでした(50代:派遣社員)

・法律で取り締まる方がいい 監視カメラなどでチェック必要(40代:パート/アルバイト)

・最近、生まれて初めてカスハラを受けました。当時、カスハラについて全く無知だったためうまく対応できず長時間にわたって言葉の暴力を受け続けました。その後、カスハラについて自分なりに調べて知識を得たので次回カスハラに遭っても毅然とした態度で対応しようと決意しました(60代:派遣社員)

・人によってカスハラと感じるかどうかも分かれる場合もあると思います。どのようなケースが該当して会社としてどう対応するか、個人任せにしない体制が整っている必要があると思います(50代:パート/アルバイト)

・スーパーの取引先のカスハラしてた主任は過疎地のお店に飛ばされた。ざまぁみろとスッキリしました(60代:今は働いていない)

・保険の調査員をしていた時に、お金が絡むので大声で威嚇されたり、言葉じりを取られ謝罪を要求される事があった。でも相手の言葉を言葉として心で聞かないようにしていた(60代:契約社員)

・軽度なカスハラを合わせると、1日1~2回はあります。特にラッシュアワーにレジに入ると、イライラしたお客様からの当りがキツイです。他には、年末には毎年暴力事件が発生します。お客様のお忙しい時間と、イライラしている方を避けたいのが本音です(50代:パート/アルバイト)

・理不尽なカスハラは、情報共有できるといいと思います。常習になると近所で色々起こしてると思うので(30代:今は働いていない)

・AIに相手をしてもらいたいです(40代:契約社員)

・なんでもハラスメントと言われると、どぉなんでしょぉ??店員さんやサービス提供者による行為や言動が相手を傷つけたりした場合は、何ハラスメント?と思ってしまう(40代:今は働いていない)

・お客様だからといって何でもやっていいとは限らない。質の良いサービスを受けたいと思うのであれば、働いてる人に対しても敬意の気持ちがあればお互いが気持ち良く従業員も接客もできるし、お客様にも気持ち良く買い物して頂けると思います(50代:パート/アルバイト)

・お客様は神様だと勘違いしている方がまだまだいる。小売業とお客様だけではなく、メーカーと顧客(企業)の立場で、メーカー営業を見下し、横柄な態度を取る企業がいる事も残念に思う(40代:今は働いていない)

・相手は自分が正しいと信じ込んで何を言っても許されると思ってるきらいがある。こちらがお客様に対して強く言えないのをいいことに暴走する人もいる。こちらも精神的にとても苦痛であれば退く権利がほしい(50代:契約社員)

・カスハラというジャンルができて、接客業経験者としては、良い時代になってきたと感じました。逆に、こちらが顧客の立場で、お客様センターに問合せをしたとき、たまに対応が悪すぎる人がいます(40代:今は働いていない)

・カスタマーサポートの管理職の経験者です。私の場合は、無理をせずに、対応時間としては2時間以上になったら、上層部に相談して指示を仰ぐようにしていました(50代:フリー/自営業)

・最初は“何でも~ハラスメント(~ハラ)をつければ良いわけじゃない“と思ってましたが、実際に店員として勤務してた頃にカスハラや理不尽なクレームを受けて、モラルが悪いし、こちらもそれに対してもしかしたら自分も知らぬ間にカスハラをしてしまっているかも…と不安になった(50代:今は働いていない)

・カスハラという名前になったことで、軽い印象になる。本来は暴行や恐喝といった犯罪では?(40代:正社員)

・常連客にカスハラを受けると対応が難しい(40代:パート/アルバイト)

・セクハラについてはここ20年ほどで社会的意識が大きく変化したように、限度を超えたカスハラもまた「過去に許されたものが現代では不法行為になり得る」認識が広く社会に浸透してほしいと思います(40代:契約社員)

・携帯の契約や、wi-fiの契約で、窓口で聞いていた事と違う事があった時に、電話対応してくれたオペレーターさんに強い口調で迫った事があります(50代:パート/アルバイト)

 

プロはどう見る?

しゅふJOB総研(※) 研究顧問の、川上 敬太郎氏のコメントをご紹介します。

■川上 敬太郎氏のコメント■

今年から労災の認定基準に追加されたカスタマーハラスメント。
主婦層を中心とする就労志向の女性に「これまでの経験の中で、カスハラの被害者になったことはありますか」と尋ねると、過半数が「ある」と回答しました。
一方「これまでの経験の中で、カスハラの加害者になってしまったことはありますか」と質問すると「ある」と回答した人は6.8%に留まります。
さらに、カスハラの加害者になった経験をカスハラ被害者経験の有無で比較したところ、被害者経験がある人の方がない人より、カスハラ加害者になった経験があると回答した比率が8倍近くにおよびました。
カスハラだと思う基準は人によって異なること、またカスハラ自体に敏感か否かが、自らがカスハラの加害者になっているかどうかの認識においても大きく影響している可能性があります。

また、「あなたは、顧客からどのような行為を受けるとカスハラだと感じますか。当てはまるものがあればお教えください」と尋ねたところ、「大声で怒鳴られたり罵倒される」が最も多く74.7%。続けて順に「長時間しつこく問いただされる」「暴言をはかれる」「無理難題をつきつけられる」「威嚇されたり脅迫される」「土下座の強要などの辱めを受ける」「暴力を振るわれる」「自宅など職場外までつきまとわれる」「金品などの代償を要求される」「SNSなどで誹謗中傷される」「厳しい口調で問いただされる」「やりとりの様子を動画撮影される」と、50%を超えた項目が12に及びました。
フリーコメントには、体験談を含めた様々な声が寄せられました。
中には、カスハラという名前になったことで軽い印象になるとの指摘もあり、暴力など行為によってカスハラというよりは犯罪と捉えている人もいるようです。
また、「お客様は神様」という言葉が誤解を招いているとする指摘も多く見られました。
顧客を大切にする気持ちは大切ですが、顧客を上とする“上下の関係性”ではなく、商品やサービスを提供する側とされる側とが“互いに尊重しあう関係性”をベースにする必要があるのではないでしょうか。

 

■調査概要

調査手法:インターネットリサーチ(無記名式)

有効回答者数:637名 ※女性のみ

調査実施日:2023年9月12日(火)~2023年9月19日(火)まで

調査対象者:ビースタイル スマートキャリア登録者/求人サイト『しゅふJOB』登録者

 

しゅふJOB総研所長 兼 ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏 プロフィール

川上 敬太郎(かわかみ けいたろう)/しゅふJOB総研 研究顧問 兼 ヒトラボ編集長

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業管理職、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総合研究所』を起ち上げ所長就任。

これまでに、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査・分析し、およそ300本のレポートを配信。2021年に独立し現職の他、ワークスタイル研究家として解説記事の執筆・講演、広報ブランディング活動のアドバイザリーなどに携わる。

人材派遣、紹介、アウトソーシングなど人材サービス事業に20年以上従事し、役員・管理職として営業や新規事業の立ち上げなど事業現場の最前線から、広報ブランディング・経営企画・人事など管理部門までを管轄。雇用・労働分野の有識者として多数のメディアに出演し、人材マネジメントから法規制まで雇用労働分野の幅広いテーマについて意見提言を行う。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。

Facebookページ:『ヒトラボ』編集長(2011年~)/Facebookグループ:『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰(2016年~)/JCAST会社ウォッチ解説者/日本労務学会員

◇委員等
厚生労働省 委託事業検討会委員
民間人材サービス活用検討事業「民間人材サービス事業者のノウハウを活用した女性の復職促進検討会」(平成29~30年度)
労働者等のキャリア形成・生産性向上に資する教育訓練開発プロジェクト事業「プログラム検討委員会」(平成29~31年度)
日本人材派遣協会 派遣事業運営支援部会員(平成20~21年、24年)、内閣府 規制改革会議 雇用WG勉強会(平成26年)など

◇メディア出演
NHK『あさイチ』解説、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』パネラー、フジテレビ『みんなのニュース:ふかぼり』解説などのテレビ出演の他、ラジオ・新聞・雑誌・ビジネス系ウェブメディアなどでコメント多数

◇執筆・その他
ITメディア連載『働き方の見取り図』/JCAST会社ウォッチ連載『ここがヘンだよ会社の常識 ~兼業主夫のひとりごと』他、JBpress、日本経済新聞、日経MJ、時事通信、BUSINESS INSIDER JAPAN、NEWSポストセブンなど執筆・寄稿記事多数。大学や地方自治体、男女共同参画センターなどでの講演、パネルディスカッションのモデレーターも務める

 

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<しゅふJOB総研について>
「結婚・出産などのライフイベントに関わらず、 もっと多くの女性が活躍できる社会をつくりたい」そんな志のもとにつくられた研究所です。「女性のライフスタイルと仕事への関わり方」に対する社会の理解を高め、女性の働きやすい職場をより多くつくっていくために定期的なアンケート等の調査を実施、結果を社会に発信しています。

しゅふJOB総研公式ツイッター
https://twitter.com/shufujobsoken

過去の調査結果はこちら
https://www.bstylegroup.co.jp/news/shufu-job/

しゅふJOB総研は、東京大学SSJDAに過去の調査データを寄託しています
http://bit.ly/2n8jHIJ

 

◇記事作成にあたって参考

厚生労働省 心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました

労働政策研究所・研究機構 カスハラや感染の危険性高い業務継続を労災認定基準に追加

 

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