アンケート調査

育休を2年まで「延長したい」62.3%。保育園の“落選狙い”どう思う?(しゅふJOB総研 独自調査)

公開日:

しゅふJOB総研

 

2023年4月にこども家庭庁から公開された調査によると、保育所などの入所枠が空くのを待つ「待機児童」は全国で2600人あまり、調査開始以降最も少なくなったとされています。

待機児童がいなかったのは、青森、山形、栃木、群馬、新潟、山梨、富山、石川、福井、岐阜、鳥取、島根、長崎、大分、宮崎など15県とされ、就学前の子どもの数が想定以上に減少し申込者数が見込みを下回ったことが要因とされています。一方で保育士不足、共働き世帯の増加による需要増も依然として問題です。

また、「落選狙い」という言葉があることをご存じでしょうか。現行の制度では1歳を超えて育児休業の取得をするためには一度保育利用の申請をして落選をせざるを得ず、高倍率の園に申し込んだり、近隣1園のみ申し込み落選の確立を上げることで入園できなかった証明とするのです。

保育園の“落選狙い”は本当に復職して仕事をしたい人の就労を妨げる可能性がありますが、育休延長をするためには現状落選を狙うしか手立てがありません。実際に働く女性たちはどのように考えているのでしょうか。

仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層の実情や本音を探る調査機関『しゅふJOB総研』が2024年2月に公開した『保育園の落選狙い』をテーマに、主婦層を中心とする就労志向の女性を対象に行ったアンケートをご紹介します。

 

育休をとるとしたら、2年まで延長したいと「思う」62.3%

Q.育休は2年まで延長することができます。もしあなたが育休をとるとしたら、2年まで延長したいと思いますか(単一回答)

保活の結果に関係なくそう思う…35.0%
保活がうまくいかなければ思う…27.3%
思わない…11.9%
わからない…25.8%

延長を希望する回答が62.3%と半数以上を占めています。

 

2019年に行われた調査と比較して見ましょう。この5年間で就労志向の女性の意向に変化はあるのでしょうか。

育休を2年まで延長するか(2024年調査と2019年調査の比較)

2019年調査では、育休を延長したいという意向の回答が56.0%だったことに対し、2024年には62.3%と増加傾向にあります。

 

育休を2年まで延長するか(お子さんがいる・いない 回答者別比較)

また、育休を延長することについて、回答者のお子さんの有無でも比較しています。この図からは子供がいる人が育休延長を希望しているだけでなく、子供のいない人も育休延長について肯定的に考えている様子がうかがえます。

 

育児休業を延長する条件、課題は

育児休業は「育児休業の取得は、子どもが1歳になるまで」とされており、育児休業を延長することができるのは、保育所などに入所できない場合に限り、1歳6か月まで(再延長で2歳まで)
延長することができる制度になっています。

そのため1歳を超えて育児休業を取得したいと希望する場合、入所する意思がなくても保育園などに申し込み”落選”しなければ、育児休業は延長できません。

ただし、入所が内定したにもかかわらず辞退する場合には「保育所入所保留通知書」に理由が記載されてしまったり、やむを得ない事情でなければ育児休業を延長する要件を満たさないとして育児休業給付金が支給されないこともあります。

また、就労意向が高く復職を希望している人が落選し、育休延長を希望している人が内定を受けてしまうケースもあるでしょう。

 

保育園の“落選狙い”が起きていることについてどう思う?「ルールが問題」64.3%

Q.育休延長を目的に、いわゆる「落選狙い(※)」が起きていることについてどう思いますか(複数回答) ※あえて倍率の高い保育所に申し込んで落選通知を受け取り、育休延長手続きをする行為を落選狙いと指しています

落選しなければ育休延長ができないルールが問題…64.3%
本当に保育所に入りたい人に迷惑をかけている…37.5%
自治体が保育所を十分提供できていないことが問題…31.9%
育休延長するためには致し方ない…9.8%
その他…5.4%

 

「落選狙い」は数年以内に始まったものではなく、前回調査が実施された2019年にも問題になっていました。5年前はどのように考えられていたのでしょうか。

2019年調査では、2024年調査よりも「本当に保育所に入りたい人に迷惑をかけている」「育休延長するためには致し方ない」の回答が多くなっています。

 

子供の有無別比較も見てみましょう。

 

最後に、フリーコメントで寄せられた声をご紹介します。

 

育休延長のための保育園落選狙いをどう思うか?フリーコメント

・私自身、自営業なので点数低く、育休もなく、保育園に2年連続落ちてしまい、運良く4年保育の幼稚園に入れたが、本当に大変だったので、ただただ迷惑です(30代:フリー/自営業)

・自社に保育所を設ける、子連れも曜日や時間を決めてでも最初は良いからOKにするなど、みんなで助け合う必要がある(40代:今は働いていない)

・どんなルールにも穴はある。それをわかってやるかやらないかは個人次第(40代:パート/アルバイト)

・そもそも、大切な時期に仕事をしなければならないことに疑問(50代:今は働いていない)

・性の差関係なく、育休を取りたい人、一年くらいで働きたい人、それぞれの事情に柔軟に対応出来る社会に全くなってないなと思う(40代:パート/アルバイト)

・そういう人が周りにたくさんいる(50代:パート/アルバイト)

・そもそも育休を取れない会社が多すぎるのが問題(40代:今は働いていない)

・個々のモラル等の問題もある(30代:パート/アルバイト)

・育休延長はいらない(40代:今は働いていない)

・育休延長を希望する理由による(50代:パート/アルバイト)

・落選しても、違う保育園を捜したら良いのではないでしょうか?(50代:フリー/自営業)

・会社にも迷惑をかけているし、卑怯な考えだと思う(30代:パート/アルバイト)

・時短正社員のように、正社員のまま時短を選べるようになると良い(40代:正社員)

 

プロはどう見る?

しゅふJOB総研(※) 研究顧問、川上 敬太郎氏のコメントをご紹介します。

 

■川上 敬太郎氏のコメント■

 2017年以降、お子さんを預けたいものの保育所が見つからないなどの事情がある人は育児休業が2年まで延長できるようになっています。主婦層を中心とする就労志向の女性に「育休は2年まで延長することができます。もしあなたが育休をとるとしたら、2年まで延長したいと思いますか」と尋ねたところ、「思う」と回答した人が6割を超えました。「思う」と回答した人の比率は、2019年の調査(※)から6.3ポイント増えています。また、お子さんがいる人といない人との比較ではお子さんがいる人の方が18.5ポイント多くなりました。実際に子育てに携わった人の方が2年までの延長を希望する傾向が高いようです。

 続けて「育休延長を目的に、いわゆる「落選狙い」が起きていることについてどう思いますか」と尋ねると、「本当に保育所に入りたい人に迷惑をかけている」と批判的な声が4割近かったものの、最も多かったのは「落選しなければ育休延長できないルールが問題」で6割超でした。2019年との比較では、ルールが問題とする声が微増だったのに対し、「本当に保育所に入りたい人に迷惑をかけている」と「育休延長するためには致し方ない」の2項目は減少しており、落選狙いは個々の保護者のスタンスの是非よりもルールの不備と認識する傾向がやや強まったようです。一方、お子さんがいる人といない人の比較では、お子さんがいる人の方が「自治体が保育所を十分提供できていないことが問題」とする声が少なくなりました。

 自治体の取り組みが進み、実際に子育てしている人の方が保育所不足を感じる度合いが和らいでいるのかもしれません。フリーコメントには、落選狙いや育休延長に反対する声がある一方で、それぞれの事情を汲む柔軟性や助け合いの必要性、時短正社員などを求める声も寄せられました。落選狙いが起きてしまうルールの修正が求められる一方で、保育所や育休制度の整備だけに留まらず、個々の希望にできる限り寄り添えるよう多様な働き方の選択肢など、仕事と育児を両立しやすくするための総合的な取り組みが必要なのだと考えます。

※2019年調査(2024年との比較では、女性の回答のみ抽出して再集計):https://www.bstylegroup.co.jp/news/shufu-job/news-16267/https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

 

■調査概要

調査手法:インターネットリサーチ(無記名式)
有効回答者数:589名 ※女性のみ
調査実施日:2024年1月17日(水)~2024年1月24日(水)まで
調査対象者:ビースタイル スマートキャリア登録者/求人サイト『しゅふJOB』登録者

 

しゅふJOB総研所長 兼 ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏 プロフィール

川上 敬太郎(かわかみ けいたろう)/しゅふJOB総研 研究顧問 兼 ヒトラボ編集長

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業管理職、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼編集委員などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総合研究所』を起ち上げ所長就任。

これまでに、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査・分析し、300本以上のレポートを配信。2021年に独立し現職の他、ワークスタイル研究家として解説記事の執筆・講演、広報ブランディング活動のアドバイザリーなどに携わる。

実務経験分野は、人材派遣・紹介・アウトソーシングなど人材サービス事業に20年以上従事し、役員・管理職として営業や新規事業の立ち上げ、広報ブランディング、経営企画、人事など事業現場の最前線から管理部門まで管轄するなど多岐にわたる。人材マネジメントから法規制まで、雇用労働分野の幅広いテーマについて多数のメディア出演などを通して意見提言を行う。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。

Facebookページ:『ヒトラボ』編集長(2011年~)/Facebookグループ:『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰(2016年~)/すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役/JCAST会社ウォッチ解説者/日本労務学会員

◇委員等
厚生労働省 委託事業検討会委員
民間人材サービス活用検討事業「民間人材サービス事業者のノウハウを活用した女性の復職促進検討会」(平成29~30年度)
労働者等のキャリア形成・生産性向上に資する教育訓練開発プロジェクト事業「プログラム検討委員会」(平成29~31年度)
日本人材派遣協会
派遣事業運営支援部会員(平成20~21年、24年)、内閣府 規制改革会議 雇用WG勉強会(平成26年)など

◇メディア出演
NHK『あさイチ』解説、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』パネラー、フジテレビ『みんなのニュース:ふかぼり』解説などのテレビ出演の他、ラジオ・新聞・雑誌・ビジネス系ウェブメディアなどでコメント多数

◇執筆・その他
ITメディア連載『働き方の見取り図』/JCAST会社ウォッチ連載『ここがヘンだよ会社の常識 ~兼業主夫のひとりごと』他、JBpress、日本経済新聞、日経MJ、時事通信、BUSINESS INSIDER JAPAN、NEWSポストセブンなど執筆・寄稿記事多数。大学や地方自治体、男女共同参画センターなどでの講演、パネルディスカッションのモデレーターも務める。

 

しゅふJOBでお仕事をさがしてみる

 

<しゅふJOB総研について>
「結婚・出産などのライフイベントに関わらず、もっと多くの女性が活躍できる社会をつくりたい」そんな志から始まった2011年設立の研究所です。ライフスタイルと仕事の望ましいバランスに対する社会の理解を高め、女性のみならず誰もが働きやすい職場をより多くつくっていくために、定期的なアンケート等の調査を実施し結果を社会に発信しています。

しゅふJOB総研公式ツイッター
https://twitter.com/shufujobsoken

過去の調査結果はこちら
https://www.bstylegroup.co.jp/news/shufu-job/

しゅふJOB総研は、東京大学SSJDAに過去の調査データを寄託しています
http://bit.ly/2n8jHIJ

 

 

<ビースタイルグループについて>

『時代に合わせた価値を、創造する。』という存在意義 -PURPOSE- のもと、その時代の社会問題や人々の不便を革新的な事業によって解決しようと取り組んでいます。創業以来、しゅふの雇用をのべ18万人以上創出してきた「しゅふJOB」や、多様な働き方×ハイキャリアを実現する「スマートキャリア」などの人材サービス事業を主軸に、業務自動化支援にも取り組み、使命 -MISSION- 『「はたらく」をもっと、しあわせに。』を、人と仕事の適材適所によって実現してまいります。

しゅふJOB
しゅふJOB

この記事を書いた人

しゅふJOBナビ編集部

twitter

アンケート調査の他の記事も見てみる

しゅふJOB