アンケート調査

女性の正社員比率に生じるL字カーブ「解消すべき」52.4%(しゅふJOB総研 独自調査)

公開日:

しゅふJOB総研

 

 

仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層の実情や本音を探る調査機関『しゅふJOB総研』が独自に行ったアンケート調査から、女性の正社員比率に生じる『L字カーブ』について考えてみましょう。

 

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女性の雇用率をあらわす『L字カーブ』『M字カーブ』

女性の正規雇用率(正社員比率)を線グラフであらわしたとき、20代後半をピークに年齢が上がるたびにグラフは右肩下がりで低下していきます。そのグラフはLを寝かせたような形に見えるため『L字カーブ』と呼ばれています。

また、女性の就業率について線グラフであらわしたとき、出産・育児をきっかけに20代後半から30代にかけて低下し、その後やや回復傾向をみせます。このグラフは『M字カーブ』と呼ばれています。ただし、出産・育児語に就業する場合パート・アルバイトなど非正規雇用が多くなっています。

内閣府:男女共同参画局 2-10図 女性の年齢階級別正規雇用比率(L字カーブ)(令和3(2021)年)

 

女性の正社員比率に生じる『L字カーブ』就労思考の女性は

2023年7月に仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層の実情や本音を探る調査機関『しゅふJOB総研』が行った、主婦層を中心とする就労志向の女性にアンケート調査を見ていきましょう。

L字カーブは「解消すべき」52.4%/年代別比較

設問:政府は年齢が上がるにつれて女性の正社員比率が下がっていく「L字カーブ」の解消を目指しています。あなたはL字カーブを解消すべきだと思いますか。(単一回答)

解消すべきだと思う…52.4%
解消すべきだと思わない…3.4%
一概に言えない…37.6%
わからない…6.6%

 

<年齢別比較>

年代が上がるにつれ「解消すべきだと思う」の回答率が高く、子育て世帯の多い30代では「解消すべきだと思わない」という回答率が他の年齢層に比べて高くなっています。

 

L字カーブを解消するには?具体的な取り組み

設問:L字カーブを解消するには、どんな取り組みが必要だと思いますか(複数回答)

必要な時に柔軟に休みがとれる職場体制を整える…74.3%
家事育児負担の女性への偏りをなくす…56.7%
在宅勤務やテレワークを普及させる…48.5%
性別を問わず産休や育休をもっと取得しやすくする…47.6%
正社員の長時間労働をなくす…45.8%
正社員採用時に女性であることが不利にならないようにする…45.1%
必要な時に家事や育児を他の人に任せやすい仕組みをつくる…41.8%
産休育休明けの女性のキャリアダウンやマミートラックを回避する…34.2%
転居を伴う転勤をなくす…29.7%
子育て社員の境遇を理解するための社員研修を実施する…29.1%
配偶者控除などの扶養枠をなくす…16.8%
その他…6.5%

 

みんなどう思ってる?アンケート回答者の声

フリーコメントより
◇寄せられたフリーコメントより抜粋(年代:雇用形態)

<L字カーブについて「解消すべきだと思う」と回答した人>

・仕方ない事とは片付けないで欲しい(60代:パート/アルバイト)

・社員でも在宅や時短での勤務を可能にすることで、子育てとのバランスが取れて働ける女性が増えると思う(40代:SOHO/在宅ワーク)・パート・アルバイト等の時短勤務も簡単に正社員採用できるようにする。。そのかわり、正社員は簡単にクビにできないという法や風潮を変える(50代:パート/アルバイト)

・そもそも、妊娠したり子育てで、一旦やめなければならないような社会の雰囲気や社会のあり方を変えなければ解消しない(40代:パート/アルバイト)

・昔から育児家事は女性の仕事だと当たり前になっています。現在では男性も育休が取れるようにはなってきてると言っても、まだまだ少数です。この常識になっている意識を変えないと解消は出来ないと思います(30代:パート/アルバイト)

・正社員を辞めずに頑張ろうと思っていても、最終的には辞めざるを得ないと感じてしまう女性がたくさんいる(40代:派遣社員)

・育児が落ち着いてきたら今度は介護の問題がでてくるので、途中からフルタイム勤務にするのはハードルが高い(40代:パート/アルバイト)

・ただでさえ年齢が上がると再就職が難しくなるのに加えて、女性だと更に難しくなるのを解消する必要がある(40代:契約社員)

・60歳超えても いっぱい働けると思う 固定観念を無くして欲しい(60代:パート/アルバイト)

・キャリアや才能がある人は時給の良いお仕事に就けるけど子育てしていた人はキャリア無いからそこが認められないから。子育てもキャリアにしてくれたらいいのに(50代:派遣社員)

 

<L字カーブについて「一概に言えない」と回答した人>

・結婚や出産で働けなくなるのは仕方ないので、難しい問題だと思う(50代:パート/アルバイト)

・正社員になりたいわけではないのでそんなに気にならない(40代:フリー/自営業)

・正社員でバリバリ働くには子どもを犠牲にしないと働けない。中学生になったら働けると思ったが、小学生よりも部活や塾など増えて逆に働きにくい。こどもが育っていざフルタイムで働こうと思っても年齢の壁でなかなか仕事につけません(40代:パート/アルバイト)

・正社員だからこうしなくてはいけない、フルタイムじゃないといけない、責任のあるポジションにつかないと、など固定観念や先入観
があり、正社員でいると言うモチベーションを下げている。頭から変えないとカーブは止まらない(30代:その他の働き方)

・L字カーブを解消すると、専業主婦(主夫)の肩身が狭くなるという懸念がある(50代:パート/アルバイト)

・人手不足解消のために、高齢でも健康なら働けると思うが、やりたい仕事やれる仕事が一致しないとL字解消は難しい気がする(50代:今は働いていない)

・L字カーブになるのは、やはり子育てが大きな原因ではないかと思います。働きたいのに働けない。または、働けても自分で子育てがしたい人もいると思います。なので、もっと柔軟な働き方ができる社会になればいいとおもいます(50代:パート/アルバイト)

・女性が働きやすい環境を作るだけでなく、子供や高齢者に優しい社会を作らなければ、実現しないと思う(50代:正社員)

・家庭でも職場でも女性の負担はたくさんあるのに さらに 正社員で働かせようとする考え方を理解できません(40代:パート/アルバイト)

・そもそも正社員を無くして、人材の流動性を高めると同時に研修などのフォローを充実させるべき(40代:今は働いていない)

 

<L字カーブについて「解消すべきだと思わない」と回答した人>

・家事育児の負担を夫婦平等にするように政府主導で改革しようとするのは疑問。各家庭によって家事育児分担割合は決めればよい(50代:派遣社員)

・在宅勤務が当たり前になり、正社員でも6-7時間程度で年収300以上もらえれば解消出来ると思う 保育園のお迎え時間に8時間も働いたら絶対間に合わない(30代:フリー/自営業)

・会社に勤める前提ではなく、もっと個人単位(個人事業主)で仕事がしやすい環境の社会にすれば、Lカーブ関係なくなると思う(30代:パート/アルバイト)

・解消を目的としないで、働きたい人は働き、育児のために退職したい人は退職するという、個人個人のスタイルを尊重してほしい(50代:パート/アルバイト)

・もちろん、正社員として働き続けることができるような取り組みも必要だが、子育て、介護、体調などによってパートやアルバイトを希望する人もいる。もう少しそちらの待遇改善にも目を向けて欲しい(40代:その他の働き方)

 

<L字カーブについて「わからない」と回答した人>

・結婚する女性だけが女性ではない。結婚して仕事をやめたり出産育児をする前提で制度設計すると、独身女性だけでなく既婚女性も離婚
しづらくなるなど弊害があると思う(30代:契約社員)

・短時間勤務、出勤日数なども体力や環境に応じて配慮してもらえるような雇用形態を希望します(50代:パート/アルバイト)

・年齢が上がるにつれて女性の正社員比率が下がっていくということを今初めて知ったし、それがなぜそうなっているのかわからないから(40代:正社員)

・家事育児を誰かがやらなくてはいけないから、代行できる制度を作るか、家でできる仕事を増やすとかしかないと思う(40代:パート/アルバイト)

・どうして子育て世代の女性が正社員として働く選択をしかねるのか、まずは社会や会社がというより、夫の理解をすすめるべきと思う。理解しているようで理解していないと思う(30代:その他の働き方)

 

プロはどう見る?

しゅふJOB総研(※) 研究顧問の、川上 敬太郎氏のコメントをご紹介します。

■川上 敬太郎氏のコメント■

女性の正社員比率を折れ線グラフにすると、Lの字を寝かせたような形になることからそう呼ばれる“L字カーブ”。

主婦層を中心とする就労志向の女性に「あなたはL字カーブを解消すべきだと思いますか」と尋ねたところ、52.4%が「解消すべきだと思う」と回答しました。

一方で、37.6%は「一概に言えない」と答えています。

また、回答を年代別に比較してみると、「解消すべきだと思う」と答えた比率は年代が高くなるほど上がり、逆に「一概に言えない」と答えた比率は年代が高くなるほど下がりました。

フリーコメントには、個人事業主で仕事しやすい環境を望む声や正社員を望まないという声も寄せられており、必ずしも正社員率の向上に諸手を上げて賛成する女性ばかりではなく、低い年代層ほどその比率が高い傾向があるようです。

また、「L字カーブを解消するには、どんな取り組みが必要だと思いますか」との質問については、「必要な時に柔軟に休みがとれる職場体制を整える」が最も多く74.3%。さらに「短時間・短日数正社員を普及させる」が67.2%、「家事育児負担の女性への偏りをなくす」が56.7%と過半数になりました。

「在宅勤務やテレワークを普及させる」と回答した人も48.5%と半分近くの比率となっており、職場では柔軟に働ける体制を整えること、家庭では女性の負担を軽減することが鍵になることが伺えます。

一方、「配偶者控除などの扶養枠をなくす」と回答した人は16.8%と最も少なくなりました。扶養枠に抑える層はパートタイマーなどで働くことが多く、正社員として働くことを望む層とでは課題感が異なるということなのかもしれません。

人はそれぞれ置かれている立場が異なり、望む働き方も異なります。ノーベル経済学賞を受賞したハーバード大学のゴールディン教授が、長時間労働などを前提とする「貪欲な仕事」の問題を指摘したように、短時間・短日数正社員など柔軟性と高収入を両立できるような働き方の普及を含め、それぞれが望む働き方を選択できるようにしていくことが大切なのだと考えます。

 

■調査概要
調査手法:インターネットリサーチ(無記名式)
有効回答者数:649名 ※女性のみ
調査実施日:2023年7月11日(火)~2023年7月18日(火)まで
調査対象者:ビースタイル スマートキャリア登録者/求人サイト『しゅふJOB』登録者

 

しゅふJOB総研所長 兼 ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏 プロフィール

川上 敬太郎(かわかみ けいたろう)/しゅふJOB総研 研究顧問 兼 ヒトラボ編集長

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業管理職、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総合研究所』を起ち上げ所長就任。

仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”のべ35000人以上の声を調査・分析し、200本以上のレポートを配信。2021年に独立。

“ワークスタイル”をメインテーマにした研究・執筆・講演、企業の事業支援および広報ブランディング活動のアドバイザリーなどに携わる。

人材派遣、紹介、アウトソーシングなど人材サービス事業に20年以上従事し、役員・管理職として営業や新規事業の立ち上げなど事業現場の最前線から、広報ブランディング・経営企画・人事など管理部門までを管轄。雇用・労働分野の有識者として多数のメディアに出演し、人材マネジメントから法規制まで雇用労働分野の幅広いテーマについて意見提言を行う。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。

Facebookページ:『ヒトラボ』編集長(2011年~)/Facebookグループ:『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰(2016年~)/JCAST会社ウォッチ解説者/日本労務学会員

◇委員等
厚生労働省 委託事業検討会委員
民間人材サービス活用検討事業「民間人材サービス事業者のノウハウを活用した女性の復職促進検討会」(平成29~30年度)
労働者等のキャリア形成・生産性向上に資する教育訓練開発プロジェクト事業「プログラム検討委員会」(平成29~31年度)
日本人材派遣協会 派遣事業運営支援部会員(平成20~21年、24年)、内閣府 規制改革会議 雇用WG勉強会(平成26年)など

◇メディア出演
NHK『あさイチ』解説、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』パネラー、フジテレビ『みんなのニュース:
ふかぼり』解説などのテレビ出演の他、ラジオ・新聞・雑誌・ビジネス系ウェブメディアなどでコメント多数

◇執筆・その他
ITメディア連載『「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?』/マネープラス連載『ワークスタイルの見つけ方』
他、日本経済新聞、日経MJ、時事通信、NEWSポストセブン、アーバンライフメトロなど執筆・寄稿記事多数
大学や男女共同参画センターなどでの講演、パネルディスカッションのモデレーターなども務める

 

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<しゅふJOB総研について>
「結婚・出産などのライフイベントに関わらず、 もっと多くの女性が活躍できる社会をつくりたい」そんな志のもとにつくられた研究所です。「女性のライフスタイルと仕事への関わり方」に対する社会の理解を高め、女性の働きやすい職場をより多くつくっていくために定期的なアンケート等の調査を実施、結果を社会に発信しています。

しゅふJOB総研公式ツイッター
https://twitter.com/shufujobsoken

過去の調査結果はこちら
https://www.bstylegroup.co.jp/news/shufu-job/

しゅふJOB総研は、東京大学SSJDAに過去の調査データを寄託しています
http://bit.ly/2n8jHIJ

 

 

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