アンケート調査

「年収の壁・支援強化パッケージ」扶養枠内で働く人の利用希望は29.9%(しゅふJOB総研 独自調査)

公開日:

しゅふJOB総研

 

2023年10月、政府は「年収の壁」対策として”年収の壁・支援強化パッケージ”を開始しました。

この”年収の壁・支援強化パッケージ”は、どの職場でも人手不足の状況が続く中で、短時間労働者(パート・アルバイトなど)が「年収の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりを支援するために立案されました。

当面の対応として、2つの対策が発表されています。

1つめが「106万円の壁」対応。2つめが「130万円の壁」対応です。

年収106万円をこえると厚生年金・健康保険に加入、年収130万円を超えると国民年金・国民健康保険に加入しなくてはいけなくなる人が損をしないように、国から企業に支援金を支払うという施策です。

そのため、このパッケージを利用したい企業が国に申請をする必要があり、勤務先の方針によって利用できる・できないが変わってきます。

 

収入上限を決めて働いている人は、多くが扶養枠内で働きたい学生や主婦(アルバイト・パートなど)がほとんどです。

扶養枠内で働きたい人はこのパッケージを利用できるなら利用したいと考えているのでしょうか?

仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層の実情や本音を探る調査機関『しゅふJOB総研』が仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層に行ったアンケート調査があるのでご紹介していきます。

 

1.2023年の収入上限「年収103万円」31.6%、「収入制限なし」36.4%

2023年を振り返って、あなたは扶養枠を意識して収入上限を設定していましたか(単一回答)という設問に対して、

年収制限を考えて働いていた方は回答者の50.5%です。うち31.6%の人が配偶者控除や家族手当支給枠内での勤務を希望しています。

 

2.2024年の収入上限「年収103万円」29.8%、「収入制限なし」39.1%

来年(2024年)に扶養枠を意識して年収上限を設定しますか?という設問に対して、上限を設定すると回答した方は49%です。来年からは収入制限を設定しないと回答した方が約3%増加した結果になっています。

では、”年収の壁・支援強化パッケージ”を利用して働きたいと考えている方はどのくらいいるのでしょうか。

 

3.年収の壁・支援強化パッケージ「利用する」20.4%

『政府は130万円などの収入上限を超えても連続2年まで扶養枠内にとどまれる制度を打ち出しました。あなたはこの制度を利用しようと思いますか。考えに最も近いものをお教えください。』という設問に対して、利用したいと回答した方は20.4%でした。

内訳も見ていきましょう。

4.パッケージの利用希望:2023年に収入上限を設定していた・いなかった別比較

5.パッケージの利用希望:2024年に収入上限を設定する・しない別比較

 

6.2024年の収入上限設定に対する考え方/フリーコメントより

◇寄せられたフリーコメントより抜粋(年代:雇用形態)

 

<2024年に収入上限を「設定する」と回答した方の理由>

・夫の組合健保が手厚いので、扶養から外れたくない(30代:フリー/自営業)

・中途半端に働いて、面倒な計算に時間と労力をかけたくない(40代:今は働いていない)

・働きたくない(20代:パート/アルバイト)

・法が改定されても期間限定ならば、このままの状態を維持した方が後々面倒ではないと思うから(40代:パート/アルバイト)

・年収がどうとかより、実際育児家事ワンオペなので扶養内程度しか働けない。体力、時間的に(40代:今は働いていない)

・本当は収入制限なしで働きたいが、年齢的に雇用してもらえないので、130万にしている(50代:パート/アルバイト)

・夫から扶養を超えないようにと言われているため(50代:今は働いていない)

・私学の助成金のことを考えると所得を増やせない(40代:パート/アルバイト)

・扶養を超えると、社保負担で手取りが減り、且つ、夫の税率が上がり税金が増額し、世帯収入も減るから(60代:派遣社員)

・103万円を超えることでどうなるのか具体的にはっきり分からず不安なので、なるべく超えない範囲で働きたいと思います(40代:パート/アルバイト)

 

<2024年に収入上限を「設定しない」と回答した方の理由>

・ひとり親なので制限は関係ないです(50代:フリー/自営業)

・できる限り働きたいので。時間内でしか働けない環境の人のフォローに回りたい(60代:パート/アルバイト)

・子どもが大学生になり、教育費も生活費も不足しているので。将来に向けて自立したい気持ちもある(50代:契約社員)

・子供が中学生になったこともありお金もかかるため、フルタイムで働き出しました。夫婦共に歳もとってきたのでこれからはどちらかが倒れてもいいように2本の柱で頑張りたいと思っています(40代:派遣社員)

・今まで一度も扶養になった事がない、個人的に誰かの扶養になるのが嫌でした(60代:契約社員)

・コロコロ制度が変わっていちいち考えながら仕事する方が苦痛だから(30代:パート/アルバイト)

・配偶者の所得が減ってしまったため(50代:今は働いていない)

・少しでも年金額が増えるように厚生年金を掛けたいから(50代:契約社員)

・働けるなら働いたほうがいいし、他の職種よりは時給がいいからそうするしかない(30代:今は働いていない)

・扶養枠にしてしまうと自分の働きたい様に働けないため(40代:派遣社員)

 

<2024年に収入上限について「仕組みがよくわからない」または「その他」と回答した方の理由>

・時給によって考える(50代:今は働いていない)

・103万円を超えた時の、デメリットがよくわからない。130万円以内の時の、デメリットも、よくわからない(60代:その他の働き方)

・収入上限は2年まで優遇で、その後はどうするの?再就職は難しそうなので、長く働けるようにしたいので、慎重になります(50代:今は働いていない)

・子供の成長とともに、仕事を再開したいが、どのくらいの収入なら損にならないのかいまいちわかりにくく、検討している最中。可能ならば月15万ほど働きたい意思はあるが、103万に収まる方が良いのか悩み中(40代:フリー/自営業)

・誰でもわかりやすく説明してくれるメディアが少なく、扶養枠についてしっかりと理解できていないため(40代:今は働いていない)

・対象になる条件がよくわからない(50代:パート/アルバイト)

・勉強不足(30代:今は働いていない)

・仕組みが理解できない(40代:パート/アルバイト)

・体力と仕事内容が適していたら、ガンガン働きたい(60代:契約社員)

・臨機応変に対応すればいいと思っているから(50代:フリー/自営業)

 

プロはどう見る?

しゅふJOB総研(※) 研究顧問の、川上 敬太郎氏のコメントをご紹介します。

■川上 敬太郎氏のコメント■

仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層に「2023年を振り返って、あなたは扶養枠を意識して収入上限を設定していましたか」と尋ねたところ、年収103万円と回答した人が31.6%。年収130万円や月収88,000円、年収150万円を合わせると50.5%が収入上限を設定していました。

一方、収入制限を設定していなかった人は36.4%でした。また、「2024年に、あなたは扶養枠を意識して収入上限を設定しますか」との質問には、年収103万円と回答した人が29.8%。他も合わせると49.0%が収入上限を設定する予定で前年比微減、一方で収入制限を設定しない人は39.1%と微増です。

次に、「政府は、130万円などの収入上限を超えても連続2年まで扶養枠内にとどまれる制度を打ち出しました。あなたはこの制度を利用しようと思いますか。考えに最も近いものをお教えください」と“年収の壁・支援強化パッケージ”(※)について尋ねたところ、「利用して、収入上限を超えても扶養枠内で働きたい」が20.4%。「利用せず、収入上限に収めて扶養枠内で働きたい」18.4%、「利用せず、扶養枠を外して働きたい」は26.4%でした。

一方、「制度がよくわからないので答えようがない」が11.6%と制度理解の壁があることも伺えます。また、2023年に収入上限を設定していた人は「利用する」が29.9%だったのに対し、設定していなかった人は7.5%でした。2024年は、収入上限を設定する人は「利用する」が33.3%で設定しない人は6.5%。扶養枠を意識して収入上限を設定する人のおよそ3割が“年収の壁・支援強化パッケージ”の利用を考えているようです。

“年収の壁・支援強化パッケージ”については一定数の利用が見込まれるものの、扶養をめぐる制度は複雑なだけに、できる限りわかりやすく内容を周知する必要があります。また、短時間でも高時給だったり正社員として働けるような選択肢を増やしていくことも大事だと考えます。

※年収の壁・支援強化パッケージ:https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

 

■調査概要

調査手法:インターネットリサーチ(無記名式)
有効回答者数:550名(※)
調査実施日:2023年11月15日(水)~2023年11月22日(水)まで
調査対象者:ビースタイル スマートキャリア登録者/求人サイト『しゅふJOB』登録者

 

しゅふJOB総研所長 兼 ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏 プロフィール

川上 敬太郎(かわかみ けいたろう)/しゅふJOB総研 研究顧問 兼 ヒトラボ編集長

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業管理職、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総合研究所』を起ち上げ所長就任。

仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”のべ35000人以上の声を調査・分析し、200本以上のレポートを配信。2021年に独立。

“ワークスタイル”をメインテーマにした研究・執筆・講演、企業の事業支援および広報ブランディング活動のアドバイザリーなどに携わる。

人材派遣、紹介、アウトソーシングなど人材サービス事業に20年以上従事し、役員・管理職として営業や新規事業の立ち上げなど事業現場の最前線から、広報ブランディング・経営企画・人事など管理部門までを管轄。雇用・労働分野の有識者として多数のメディアに出演し、人材マネジメントから法規制まで雇用労働分野の幅広いテーマについて意見提言を行う。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。

Facebookページ:『ヒトラボ』編集長(2011年~)/Facebookグループ:『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰(2016年~)/JCAST会社ウォッチ解説者/日本労務学会員

◇委員等
厚生労働省 委託事業検討会委員
民間人材サービス活用検討事業「民間人材サービス事業者のノウハウを活用した女性の復職促進検討会」(平成29~30年度)
労働者等のキャリア形成・生産性向上に資する教育訓練開発プロジェクト事業「プログラム検討委員会」(平成29~31年度)
日本人材派遣協会 派遣事業運営支援部会員(平成20~21年、24年)、内閣府 規制改革会議 雇用WG勉強会(平成26年)など

◇メディア出演
NHK『あさイチ』解説、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』パネラー、フジテレビ『みんなのニュース:
ふかぼり』解説などのテレビ出演の他、ラジオ・新聞・雑誌・ビジネス系ウェブメディアなどでコメント多数

◇執筆・その他
ITメディア連載『「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?』/マネープラス連載『ワークスタイルの見つけ方』
他、日本経済新聞、日経MJ、時事通信、NEWSポストセブン、アーバンライフメトロなど執筆・寄稿記事多数
大学や男女共同参画センターなどでの講演、パネルディスカッションのモデレーターなども務める

 

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<しゅふJOB総研について>
「結婚・出産などのライフイベントに関わらず、 もっと多くの女性が活躍できる社会をつくりたい」そんな志のもとにつくられた研究所です。「女性のライフスタイルと仕事への関わり方」に対する社会の理解を高め、女性の働きやすい職場をより多くつくっていくために定期的なアンケート等の調査を実施、結果を社会に発信しています。

しゅふJOB総研公式ツイッター
https://twitter.com/shufujobsoken

過去の調査結果はこちら
https://www.bstylegroup.co.jp/news/shufu-job/

しゅふJOB総研は、東京大学SSJDAに過去の調査データを寄託しています
http://bit.ly/2n8jHIJ

 

 

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