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パートの社会保険の加入条件は?【2025年】従業員51名以上の企業も対象

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お金と法律

パートが社会保険に加入する条件はどんな内容なのでしょうか。近年、社会保険は、適用範囲を段階的に拡大してきました。現在は、多くの企業においてパートやアルバイトも加入条件を満たせば社会保険に加入しなければなりません。

「手取り収入が減るから社会保険に入りたくない」
「年収の壁に達しないよう、シフトを減らさないと」

社会保険に関連して、このような声がよく上がります。

社会保険のことをよく知れば、無用の心配を減らし、制度を正しく利用できるはずです。

これまで保険の対象外だった多くの短時間労働者(パート・アルバイト)の人たちが新たに恩恵を受けられるようになるでしょう。

本記事では、社会保険の適用拡大についての概要と、適用拡大の対象になる条件を中心に、社会保険加入のメリットまで詳しく解説します。

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パートにおける社会保険の加入条件

労働時間に関わるパート主婦の声

パートで働く労働者は、社会保険の加入条件を満たす場合に加入義務があります。近年の段階的な適用範囲の拡大により、多くの企業に勤めるパートやアルバイトも社会保険の加入対象です。

具体的には、以下の4つ条件にすべてにあてはまる場合、社会保険への加入義務が生じます。

1.週の所定労働時間が20時間以上あること

2.雇用期間が2か月以上見込まれること

3.賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること

4.学生でないこと

 

※正規従業員、フルタイム従業員は多くの企業で加入対象です。アルバイト・パートでも、正規社員の4分の3以上週の所定労働時間や月の所定労働日数を働いている場合も加入対象となります。

社会保険におけるそれぞれの加入条件について、詳しくみていきましょう。

 

週の所定労働時間が20時間以上あること

まずは、週の所定労働時間が20時間以上になっているかどうか確認しましょう。

週の所定労働時間は、基本的に契約上の所定労働時間によって判定されるため、契約上にない急な残業や休日出勤等は含まれません。

また、「先月は週15時間勤務だったけど、今月は週22時間だった」という場合でもすぐに加入対象となるわけではありません。

対象となるのは、実労働時間が2か月連続で週20時間以上になり、今後も引き続き20時間を超えると見込まれる場合です。

 

雇用期間が2か月以上見込まれること

勤務期間が1年以上となっていたところが、2022年10月から2か月以上に変わります。

雇用契約期間が2か月以上であるとみなされるには、以下の2点を満たす必要があります。

  • ・就業規則や雇用契約書、そのほか書面で契約更新がされるまたは更新される場合がある旨が明示されていること
  • ・同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている人が、更新などで1年以上雇用されていた実績があること

 

ただし、契約期間が1年未満であり、書類にも更新可能性を示す期間がなく、更新の前例がない場合は適用除外となります。

 

賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること

月8.8万円の判定も所定労働時間と同じです。毎月きまって支払われる賃金(たとえば基本給や手当など)によって計算されるので、残業代やボーナス、臨時賃金は含まれません。

臨時賃金には以下の4項目が該当します。

  1. 1.結婚手当や出産手当など一時的なもの
  2. 2.ボーナスのように一定の期間を超えるごとに支払われるもの
  3. 3.時間外労働や休日労働・深夜残業に対して支払われる割増賃金
  4. 4.最低賃金において計算に入れない皆勤手当や通勤手当、家族手当など

 

これらは月額8.8万円にふくまれません。

また、「残業があって1ヵ月だけ8万8,000円を超えてしまった!」という場合でも慌てなくても大丈夫。

社会保険の加入条件を満たすかどうかは、所定内賃金(契約書に記載されている賃金)で計算されます。社会保険上の扶養から外れたくないという方は、契約書に記載されている日数・時間・時給で月額8.8万円を明らかに超えなければ、年間106万円におさめられるようにしておけば問題ないでしょう。

 

学生でないこと

学生(夜間学部や定時制は除く)は原則として社会保険の適用対象外です。ただし、学生であっても1週間または1か月の労働日数が「正社員の4分の3以上」

一定の条件を満たす場合は、社会保険の加入対象としています。

参照:『学生は、4分の3基準に該当していても、学生という理由のみをもって健康保険・厚生年金保険の被保険者とならないのですか。』日本年金機構

上記の4点を満たし、かつ、2022年からは保険加入対象の従業員が101人以上いる企業で働く場合は保険加入適用、2024年10月からは同従業員が51人以上いる企業で働く場合は保険加入適用となります。

たとえば、1つずつの事業所規模が小さく10~20人が所属する事業所であっても、法人番号ごとにカウントされるので、従業員数は全事業所をまとめた人数でカウントされます。

法改正により社会保険加入対象になる人は新たに65万人増え、国費への負担が430億円減り、事業主負担は1,590億円増えると言われています。

 

月88,000円以下だけど週20時間以上働いている場合はどうなるの?

さきほど加入条件について「週20時間未満」で「月88,000円以下」と紹介しましたが、なかには「月8万8千円以下の収入だけど、週20時間働いている」という方もいらっしゃるかもしれません。

この場合、雇用保険の加入対象となりますが、社会保険加入対象にはなりません。

  1. 1.週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 2.雇用期間が2か月以上見込まれること
  3. 3.賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
  4. 4.学生でないこと

 

この4つの条件すべてに当てはまるパート・アルバイトなどの短時間労働者が対象のため、就労条件があてはまっているか確認してみてくださいね。

 

そもそも社会保険とは

社会保険とは、労働者の生活を保障するための公的な保険制度です。働く人が病気やけがをしてしまった場合や出産した際に、経済的な支援を受けられる保障が整っています。。

社会保険は、広義と狭義の意味があります。広義の社会保険は、以下5つの総称です。

  • ・健康保険
  • ・厚生年金保険
  • ・雇用保険
  • ・介護保険
  • ・労災保険

 

狭義の社会保険は、以下3つの総称です。

  • ・健康保険
  • ・厚生年金保険
  • ・介護保険

 

社会保険を支える2本の柱は、広義にも狭義にも該当する「健康保険」と「厚生年金保険」です。

健康保険 ・病気や怪我による経済的負担を軽減させる

・けがや病気による休業、出産時など、一時的な給付制度がある

厚生年金保険 ・労働者が加入する年金制度

・国民年金に上乗せされるため2階建て制度

 

健康保険や厚生年金保険は、従業員と雇用主(企業)が保険料を半分ずつ負担することで成り立っています。

社会保険に入っていることで、傷病手当金や出産手当金を受けられるなど多くのメリットがあります。

 

社会保険の適用拡大

社会保険は、近年適用範囲を拡大しています。

具体的には、2016年の法改正から、社会保険加入を義務付けられる企業規模の制限が緩和されており、2022年10月、2024年10月にも段階的に適用範囲が広がりました。

ここでは、社会保険の適用拡大と2024年10月に予定される変更点について、詳しく解説します。

 

適用拡大の背景と目的

社会保険の適用拡大の背景には、労働人口の減少と、進行する少子高齢化の影響があります。少子高齢化にともなう労働人口不足が進むなかで、より多くの労働者が社会保険の恩恵を受けられるよう制度改革が求められたのです。

社会保険の適用拡大により、パートやアルバイトなどの短時間労働者も、一定の条件を満たせば社会保険に加入できるようになることが期待されています。

すべての労働者が一定の社会保障を受けられるようにし、将来的に安定した生活を送れるようにすることが、適用拡大の目的です。また、労働人口減少により、納められる社会保険料が減少していくことが予測されるため、それに歯止めをかけ年金財政を安定させたいという意図もあるでしょう。

 

2022年から社会保険の適用範囲が段階的に拡大する

2020年5月に「年金制度機能強化のための国民年金法等の一部改正をする法律(年金制度改正法)」が成立し、2022年10月から段階的に社会保険の適用拡大が始まりました。

2022年10月以前、社会保険加入が義務付けられていたのは、501人以上の従業員を抱える企業で働く従業員に限られていましたが、2022年10月から101人以上500人以下の企業で働く従業員に加入対象が拡大されています。

ここで言う従業員数とは、フルタイムで働いている従業員数と、週の労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数(パート・アルバイトを含む)を合計した数字です。

 

【2024年10月】従業員数51名以上の企業に拡大

2024年10月からは、従業員数51人以上の企業で働く短時間労働者にまで、社会保険の加入義務が拡大されます。これにより、社会保険加入義務の対象外だった多くのパート・アルバイトの人々が、新たに社会保険の対象となることがポイントです。

適用拡大により社会保険に加入できるようになると、健康保険や厚生年金保険の恩恵を受けられるようになり、将来的な生活の安定や、病気・けがの際に医療的なサポートが手厚くなります。

社会保険に加入することにより、手取り額が減ることを心配する声もありますが、2023年10月から「年収の壁」への対応策も始まりました。社会保険に加入することにより手取り収入が下がる労働者に対して、賃上げなどの対策を行う企業には支援金が出るといった施策が行われています。

 

【2027年10月以降の予定】従業員50名以下の企業にも拡大される予定

2027年10月以降、社会保険の適用範囲はさらに拡大される予定です。2024年10月の変更により、従業員数が51名以上の企業が社会保険の加入対象になりました。2027年10月以降は、段階的に従業員数51名以下の企業においても社会保険の適用対象として範囲が拡大される予定です。

 

【2035年10月以降の予定】最終的に企業規模の条件は撤廃される?

社会保険の企業規模における条件は、最終的に全廃される予定です。具体的には、2035年10月以降、従業員数1人以上の企業まで適用範囲が拡大される予定のため、事実上の全廃と考えられています。

参照:『社会保険の加入対象の拡大について』厚生労働省

 

パートが社会保険に加入するメリット

社会保険の適用範囲拡大は、企業で働くパート(短時間労働者)の範囲を広げる内容です。企業規模要件の範囲を拡大することで、パートとして働く方も条件を満たせば社会保険に加入しなければなりません。

パートが社会保険に加入するメリットとして代表的な内容は以下の2点です。

  1. 1.受けられる補償が増える
  2. 2.将来もらえる年金が増える
  3. 3.106万円の壁を気にせず働ける

 

社会保険に加入することでどのような環境になるのか事前に把握しておきましょう。

 

受けられる補償が増える

国民保険から社会保険に変わることで、受けることのできる補償が以下の2点追加となります。

  • ・厚生年金による補償(報酬に比例した年金の上乗せ給付)
  • ・健康保険による補償(病気や出産時の傷病手当金や出産手当金の支給)

 

全国民が共通して受け取ることができる基礎年金に加えて、社会保険に加入すると厚生年金がもらえるようになります。

また、社会保険に加入することで傷病手当金や出産手当金として賃金の3分の2程度の給付が受けられます。

さらに、日常生活を送ることが困難な障害がある状態になった場合には「障害厚生年金」が、万が一死亡した場合には遺族に「遺族年金」が支給されます。

どちらも国民健康保険でも受けられますが、より手厚く保障してもらえます。

 

将来の年金受給額が増える

パートが社会保険に加入することで、将来もらえる年金額が増えます。厚生年金保険は、公的年金と厚生年金の2階建て制度です。本来、厚生年金に加入していなければ、国民年金のみに加入します。この場合、国民年金分しか受給できません。厚生年金に入ることで2階建ての年金を受給できるため、老後の生活はより安心です。

 

106万円の壁を気にせず働ける

パートで社会保険に加入することで、社会保険上の扶養から外れれば106万円の壁を気にせず働けるようになります。配偶者による社会保険上の扶養内で働いている方は、所得要件により、106万を超えないように所得調整をするのが一般的です。しかし、自分で社会保険に加入するということは、社会保険上の扶養から外れることになるため、労働時間や収入額を気にしなくて済みます。

ほかにも、社会保険に加入するメリットも。こちらの記事にまとめているので併せて読んでみてください。

 

社会保険の加入に必要な手続きとは?

今回の加入対象範囲の拡大に伴い、新しく厚生年金保険や健康保険に加入する方は、基本的に現在お勤めのご自身の会社を通じて手続きを行います。

但し、それまで加入していた国民健康保険や配偶者の健康保険における被扶養者の資格損失といった手続きは、別途ご自身で行う必要がありますので注意しましょう。

 

国民年金に加入している場合

厚生年金保険の加入手続きは、現在の勤め先の会社を通じて行います。

 

配偶者の健康保険に加入している場合

健康保険の加入手続きは、基本的にはご自身の勤め先を通して行いますが、配偶者の健康保険における資格喪失の届出を配偶者の勤め先を通じて行う必要があります。

必ず、その旨を配偶者の勤め先に申し出てください。

 

国民健康保険に加入している場合

健康保険への加入手続きは、国民年金に加入している場合同様に勤め先の会社を通じて行いますが、国民健康保険の資格喪失の届出は自身で行う必要があります。

具体的な手続きなど詳しくは、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

 

2025年最新:103万円の壁はどうなる?

2025年1月1日より、103万円の壁(※)は20万円引き上げられて123万円の壁となる予定です。
※年収の壁とは、年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増え、手取りが減るボーダーラインのことです。103万円の壁は、所得税の支払いが発生するボーダーラインです。

パートやアルバイトで働き、扶養されている夫・妻・子どもなどの被扶養者の給与収入が年間103万円を超えると、

・被扶養者だった本人が所得税を納める必要がある
・扶養する人が扶養控除を受けられなくなり、所得税・住民税が増加する
・扶養者の勤め先で「配偶者手当」「家族手当」などが支給されなくなる

などの問題が生じ、世帯の手取り収入が減少する可能性があります。

上記のデメリットを防ぐために、年収を103万円以下に抑えようと考える人がいます。しかし、全国的にパート・アルバイトの時給が上昇傾向にあるにも関わらず、年収を103万円以下に抑えようとすると、働ける時間が減ってしまいます。また、雇用者の働き控えにより、企業側は人手不足に陥ってしまいます。

その中で、野党の国民民主党が103万円の壁を178万円の壁に引上げることを提案しました。結果、自民・公明・国民民主の3党幹事長間で「103万円の壁は178万円を目指して来年から引上げる」と合意しましたが、2025年の税制改正大綱では178万円への増加とはならず、123万円となりました。

今回の税制改正大綱には、「引続き関係者間で誠実に協議を進める」とありますので、今後178万円まで引上げられるのか、動向に注目が集まるでしょう。

 

まとめ

今回は、2022年10月に変更となった社会保険加入の範囲についてと2024年に拡大予定の内容をご紹介しました。

この改正で社会保険加入対象になる人はとても多くなるはずです。

保険加入の条件は、それぞれ従業員数を確認するほか

  1. 1.週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 2.雇用期間が2か月以上見込まれること
  3. 3.賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
  4. 4.学生でないこと

 

を満たすことが必要です。

反対に、社会保険に加入しない方法はこれを満たさないようにすること。

もっとも調整しやすいのは週の所定労働時間ではないでしょうか。

もし従業員が50人未満の企業を選んでも、事業拡大にあわせて社員が増えたら対象になっていきます。

社会保険に加入してしっかり稼ぐか、社会保険に加入しない働き方をするか。

お仕事探しの前に考えてみることで、仕事の探し方にも変化が出てきます。

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参照

厚生労働省保健局 被用者保険の適用拡大について

 

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