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2025年最新|年金制度改正ポイントを図解でわかりやすく解説

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2025年最新|年金制度改正ポイントを図解でわかりやすく解説

2025年6月、日本の公的・私的年金制度の両方が大きく改正されました。今回の改定は短時間労働者の社会保険適用拡大在職老齢年金の見直し厚生年金の標準報酬月額の引き上げなど、企業及び人事担当者の対応が求められる改正多く含まれています。

本記事では、2025年の年金制度改正を図解とともにわかりやすく整理し、以下の点について人事業務への影響と実務上のポイントを詳しく解説します。

(1)6つの「年金制度改定法」の内容
(2)企業と従業員への影響
(3)人事担当者が確認すべき3つのポイント

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【目次】

年金制度改正とは?

年金制度改正とは、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のため、法律を改正して制度内容を見直すことです。

2026年度から施行予定の制度改正には、企業がこれから従業員を採用する場合や、在籍する従業員に対しても適用される内容が含まれています。そのため、人事担当者にとって今回の改正内容はいち早く把握しておかなければなりません。

改定内容を詳しく知る前に、まずは今回の制度改正の概要と背景について理解しておきましょう。

2025年の年金制度改正法の概要

今回の改正内容は、公的年金と私的年金の2つの分野に及びます。

公的年金(厚生年金・在職老齢年金・遺族年金)

・短時間労働者の社会保険の適用範囲拡大
・厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げ
・在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ
・遺族年金における男女差の解消
・マクロ経済スライドの見直しによる給付水準調整

私的年金(iDeCo・企業年金)

・iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)の加入範囲や掛金上限の拡大
・企業型確定拠出年金(企業型DC)の制度柔軟化や拡充

上記のほか「老齢厚生年金の配偶者加給年金額の見直し」や「再入国後に出国した外国人に対する脱退一時金請求の見直し」なども含まれます。


年金制度改正の背景にある2つの課題|「高齢化」と「多様な働き方」

2026年度から施行予定の年金制度改正は、高齢化社会と多様化する働き方に対応するためのものです。

少子高齢化により年金の捻出を支える世代が減少するなか、働き方やライフスタイルの変化により厚生年金の加入要件に満たない非正規雇用や短時間勤務者が増加しています。

昨今の現状を踏まえ、安定した制度運営と公平性を確保するためにも、今回の改正が導入されました。

【図解】(1)6つの年金制度改正内容を解説|重要な変更点

本章では、厚生労働省が公表した改正内容を基に、6つの主要な変更点を詳しく解説します。

公的年金である社会保険や老齢年金、私的年金のiDeCoや企業年金といった幅広い領域に関する改正が含まれており、企業の人事・労務管理者にも直接的な影響があります。

①【社会保険】加入対象が広がる!“106万円の壁”を撤廃
②【在職老齢年金】支給停止基準の引き上げで年金額アップ
③【遺族厚生年金】男女差を解消!公平な給付へ
④【厚生年金】標準報酬月額の上限が75万円に!従業員への影響は?
⑤【iDeCo・企業年金】加入年齢・限度額の拡充で老後の安心をサポート
⑥【基礎年金】マクロ経済スライドの見直しで持続性を強化

それぞれのポイントを押さえて、必要な対応を行いましょう。

①【社会保険】加入対象が広がる!“106万円の壁”を撤廃

これまで一部の短時間労働者は社会保険の加入対象外でしたが、企業規模要件の段階的廃止により適用範囲がさらに広がります。

いわゆる「年収106万円の壁」が撤廃されることで、年収を抑えて社会保険の扶養範囲内で働いてきたアルバイト・パート従業員が、年収を気にすることなく働き方を選択できるようになるのです。

今回の制度改正のポイントは以下のとおりです。

・企業規模要件の縮小・撤廃
・賃金要件の撤廃
・個人事業所の適用範囲を拡大

その前に!「短時間労働者」について詳しく知る▶【社労士監修】短時間労働者とは?雇用・社会保険の加入条件まとめ


企業規模要件の縮小・撤廃

以前の企業規模要件では従業員数「101人以上」の企業が加入対象でしたが、2024年10月に「51人以上」まで拡大され、2027年10月からは「従業員数36人以上の企業」にも適用、企業規模要件が以下の図のように段階的に緩和され、最終的には撤廃される予定です。

社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省
引用:社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省

今後は従業員数の少ない小規模企業者でも段階的に、短時間勤務者が週20時間以上働けば社会保険の加入対象になっていきます。


賃金要件の撤廃

従来は「所定内賃金が月額8.8万円以上」という加入要件がありましたが、今後は廃止され、収入にかかわらず週20時間以上勤務する短時間労働者が対象です。

今回の改正により、今まで対象外だった多くの短時間労働者が、新たに社会保険に加入することになります。


個人事業所の適用範囲を拡大

これまで、個人事業所における社会保険の適用は、常時5人以上の従業員を雇用する法定17業種(製造、土木・建設、鉱業、電気ガスなど)に限定されていました。

しかし、今回の改正により、2029年10月からは、常時5人以上の従業員を雇用するすべての業種の個人事業所が適用対象になります。適用範囲の拡大により、従業員数が少ない個人事業所でも社会保険の適用が進みます。

ただし、2029年10月時点で既に存在する個人事業所については当面の間、適用対象外です。この措置は、既存の事業所に対する過度な負担を避けるための配慮となります。

個人事業所の摘要拡大について|厚生労働省
引用:社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省

なお、すでに働く短時間労働者が新たに社会保険に加入する要件は、先に述べた「週20時間以上の勤務(かつ学生ではない)」に該当するかどうかです。

②【在職老齢年金】支給停止基準の引き上げで年金額アップ

在職老齢年金制度とは、老齢厚生年金を受給しつつ働く高齢者に対する年金支給を調整する制度です。今回の見直しでは“働いていても、年金を減額されにくくする”方向へと改善されています。

現在の仕組みでは、賃金と厚生年金の合計が50万円※1を越えると厚生年金が減額されています。

※1 下図のように、50万円を超過した分の半額が支給停止になる制度です。

現在の在職老齢年金制度について|厚生労働省
引用:在職老齢年金制度の見直しについて|厚生労働省

2025年の改定では、在職老齢年金制度における支給停止基準額が見直され、厚生年金と賃金の合計額の上限が、現行の月50万円※2から月62万円に引き上げられる予定です。

※2 支給停止調整額50万円は2024年度の場合。賃金変動に応じて毎年度改定あり。2025年度支給停止調整額については51万円。

在職老齢年金制度の見直しについて|厚生労働省
引用:在職老齢年金制度の見直しについて|厚生労働省

上図の【改定後の厚生年金支給の例】では、賃金月45万円+厚生年金10万円を受給しても、受給ラインである62万円までには7万円もの余裕が生まれました。現行制度だと支給停止されていた分が、今後はより多く、なかには満額受け取れる人が増えるようになるのです。

支給停止基準の引き上げは、制度全体の柔軟性と安定性を高めるための措置であり、老齢厚生年金受給者にとって就労機会の拡充と収入の安定につながります。

③【遺族厚生年金】男女差を解消!公平な給付へ

遺族年金とは、死亡した被保険者によって生計を立てていた遺族の所得を保障する年金制度です。遺族年金のひとつである遺族厚生年金は、主に会社員や公務員などの厚生年金加入者が死亡した場合に、その遺族に支給される年金です。

遺族厚生年金は、主に女性に手厚い制度設計でしたが、男性にも広く認められるようになります。

遺族に子どもがいる場合といない場合とで、扱いが異なります。


子どもがいない場合

現行制度では、妻は30歳未満で5年の有期給付、30歳以上で無期限給付、夫は55歳未満では受給権がなかったため、男女間で大きな差がありました。

しかし、今回の見直しにより、夫にも妻と同様に有期給付が認められます。

こどもがいない60歳未満の方 遺族厚生年金|厚生労働省
引用:遺族厚生年金の見直しについて|厚生労働省

上図の【改正後】にもあるとおり、男女ともに60歳未満であれば5年の有期給付に加え、60歳以上は無期限の給付対象となります。

なお、女性の場合は2028年度に40歳以上か否かで新旧いずれかの制度適用に分かれます。

・2028年度に40歳以上:改正前制度の適用
・2028年度に40歳未満:改正後制度の適用


子どもがいる年金受給者の場合

子育て中の年金受給者への保障も見直されました。老齢基礎年金や遺族厚生年金などの年金受給者に給付される遺族基礎年金の加算額が引き上げられ、子が18歳年度末になるまで(子に障害のある場合は20歳まで)年間約235,000円から280,000円へ増額されます。

子どもがいる場合の加算額について|厚生労働省
引用:遺族厚生年金の見直しについて|厚生労働省

子ひとり当たりの給付額が増加することで、子育て世帯への経済的支援が強化されます。


見直しに該当しない人

遺族厚生年金の制度改正は2028年4月に施行予定ですが、以下に該当する人は、今回の見直し対象外です。

・既に遺族厚生年金を受給している人
・60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人
・20代から50代の18歳未満の子のある方
・2028年度に40歳以上になる女性

今回の制度改正では男女差を解消し、配偶者を亡くした男性も同様に年金給付を受けられるようになるため、ジェンダー平等の観点からも大きな一歩となりました。

④【厚生年金】標準報酬月額の上限が75万円に!従業員への影響は?

国民一人当たり賃金上昇の継続を見据え、世代内公平のため、2027年9月以降、厚生年金における標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられます。

高所得者の人は毎月の保険料負担が増えますが、将来受け取れる年金額も多くなります。


そもそも「標準報酬月額」とは?

標準報酬月額とは、給与と賞与から徴収される「厚生年金保険料」や「健康保険料」を計算するための基礎となる金額です。4月~6月に支給された給与の内、基本給・残業代・各種手当などを合算し、平均額をもとに国が定めた「等級表」に当てはめて保険料を決定します。

標準報酬月額|厚生労働省
引用:厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて|厚生労働省

上図にある等級表の見本を例にすると、平均値が報酬月額の『195,000円〜210,000円』に収まる場合、厚生年金の等級は『14級』、標準報酬月額は『200,000円』です。

実際に差し引かれる社会保険料は、この標準報酬月額を基準に計算がなされます。なお、もし年度途中で給与額に大幅な増減があり、標準報酬月額が変わる場合は、新たな等級で保険料が徴収されます。

企業は、社会保険に加入する従業員一人ひとりの標準報酬月額を確認し、算出した保険料を毎月の給与や賞与から徴収して国に納付します。


標準報酬月額の上限が段階的に「最大75万円」に引き上げ

厚生年金の標準報酬月額の上限は65万円ですが、今回の見直しにより最大75万円に引き上げられます。

厚生年金 標準報酬月額の改定時期 標準報酬月額の上限額
2027年9月 68万円
2028年9月 71万円
2029年9月 75万円

月65万円を超える高所得者にとっては、従来よりも厚生年金保険料の納付額が上がりますが、自身の収入に見合った保険料を納めることで、将来受け取れる年金額が増えます。

なお、65万円以下に該当する標準報酬月額に変更はないため、月の収入が65万円以下の人は従来通りの等級で保険料を納めます。

国全体で厚生年金保険料の徴収額が増えることで、厚生年金の給付水準も高まる効果が期待できるでしょう。

⑤【iDeCo・企業年金】加入年齢・限度額の拡充で老後の安心をサポート

私的年金制度の拡充の一環として、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業年金(企業型DC)の加入可能年齢と拠出限度額の引き上げが進められています。これらの改定で、より多くの人が柔軟に老後資産を形成できる制度設計へと変わりつつあります。


iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoでは働き方を問わず、加入可能年齢の上限が70歳までに変わり、幅広い層の人がより長く積み立てられるようになります。

私的年金(iDeCo)の見直し|厚生労働省
引用:年金制度改正法が成立しました|厚生労働省

現在の加入要件では、一部の国民が年齢制限等により対象外となっていましたが、今後は“70歳までの老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していない人”であれば加入できるようになります。

また、加入者の拠出限度額についても、段階的に引き上げられる予定です。以下は、現行の限度額の表です。

iDeCoの拠出限度額について|政府広報オンライン
引用:iDeCoがより活用しやすく! 2024年12月法改正のポイントをわかりやすく解説 | 政府広報オンライン

上図のとおり、現行制度では加入者によってiDeCoの掛金上限に大きな差が見られます。自営業者などの第1号被保険者は上限『月額 68,000円』となり、第2号被保険者であるサラリーマンは『20,000円代』程度の低い限度額が適用されています。

しかし、2025年の改定内容では第1号被保険者・第2号被保険者ともに大幅な引き上げが実現し、掛金の幅が広がる予定です。

iDeCo加入者の区分 拠出限度額 引き上げ後の上限額
(他制度の掛金相当額と合算)
第1号被保険者(国民年金 被保険者) 75,000円
第2号被保険者(厚生年金 被保険者) 62,000円

企業型DC(企業型確定拠出年金)

現行制度では、企業型DCの拠出限度額は月額55,000円です。ただし、確定給付企業年金(DB)など他の企業年金制度と併用している場合は、DCの事業主掛金額と他制度の掛金相当額の合計が55,000円以内となるように設定されます。

そのため、制度の組み合わせによっては、掛金の上限に差が生じ、不公平感を持たれるケースもありました。

しかし、改正後はDC限度額が62,000円に引き上げられる予定です。さらに、マッチング拠出※3においては「加入者掛金が事業主掛金の額を越えてはならない」ルールを撤廃。限度額内であれば、掛金を自由に設定できるようになります。

※3 マッチング拠出とは、企業型確定拠出年金制度において、加入者が事業主掛金に加えて、自らの意思で掛金を追加拠出できる制度です。

現行のDC拠出限度額 改定後のDC拠出限度額
55,000円 62,000円

拠出限度額とマッチング拠出の掛金改正により、従業員が企業型DCをより活用しやすい環境が整備されるため、制度設計において特に注目すべきポイントとなっています。

なお、改定内容の運用時期は、iDeCo・企業型DCいずれも年金制度改正法が成立した2025年6月から3年以内に実施予定です。

⑥【基礎年金】マクロ経済スライドの見直しで持続性を強化

基礎年金とは、日本の公的年金制度の土台となる年金で、国民年金および厚生年金の加入者が共通して受け取ることができる“定額部分の年金”です。国民年金を納めたことがある人は基礎年金を受け取れ、厚生年金を納めたことがある人は、基礎年金に加えて厚生年金(報酬比例部分)も受け取れます。

【基礎年金の種類】
1. 老齢基礎年金:老後の生活を支える
2. 障害基礎年金:障害を負った場合に受け取れる
3. 遺族基礎年金:被保険者が亡くなった場合に遺族が受け取れる

マクロ経済スライドは、現役世代の保険料負担と受給者への給付を両立させるため、将来の現役世代の負担が過重なものとならないよう、最終的な負担(保険料)の水準を定め、その中で保険料等の収入と年金給付等の支出の均衡が保たれるよう、時間をかけて緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みのことです。


基礎年金水準の低下が懸念されている

2024年の財政検証では、経済状況が好調であれば将来の基礎年金給付水準の調整が比較的早く終わるとの見方がされていますが、好調に推移しない場合はマクロ経済スライドの調整が長引くだろうと懸念されています。

そのため、次回の財政検証(2029年予定)で基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合、基礎年金のマクロ経済スライドの調整を早く終結させるために法制上の措置を講じることになりました。

将来の基礎年金水準の低下への対応|厚生労働省
引用:将来の基礎年金の給付水準の底上げについて|厚生労働省

基礎年金を底上げするための具体的なイメージとしては、調整の終了後に賃金や物価の動向を反映して給付額を引き上げる仕組みを設けます。2024年の財政検証では「62歳以下の男性」「66歳以下の女性」「一部の高所得者を除いた38歳以下」の人が、生涯に受け取る年金総額が増える見込みとなりました。

マクロ経済スライドでは、基礎年金の実質的な水準低下を防ぎ、年金受給者の生活をより安定させることを目指しています。

(2)年金制度改正による企業と従業員への影響

2025年の年金制度改正は、企業にとって制度対応や切り替えの準備が必要となり、従業員にとっては収入や将来設計に直結する影響があります。

特に、高齢者雇用や私的年金制度の活用、社会保険対応など、制度全体の理解と適切な対応が求められます。

社会保険への切り替えで従業員に生じるメリットとデメリット

年金制度改正に伴い、国民年金に加入していた人(第1号・第3号被保険者)が、厚生年金へ切り替わるケースが増加します。

社会保険に加入することで、従業員は健康保険(被用者保険)や厚生年金といった公的な保障制度の恩恵を受けられるため、病気やケガ、老後の生活に対する備えが格段に充実します。特に、国民健康保険や国民年金のみであった場合と比べると、保障の質が大きく向上するメリットがあります。

しかし、なかには「保険料負担が増え、手取りが減る」と感じ、切り替えることをデメリットと捉える人も少なくありません。社会保険(健康保険・厚生年金)と国民健康保険・国民年金とでは制度の仕組みやメリットが異なるため、正しい理解を促すことが重要です。

【国民健康保険・国民年金(第1号・第3号被保険者)】
・保険料は年ごとに定められた一定額を被保険者が全額負担
・納付書などで被保険者自ら支払う
・年金は「基礎年金」のみ受け取れる
・社会保険にはあって国民健康保険ではカバーできない保障がある

【健康保険・厚生年金(第2号被保険者)】
・保険料は従業員の月収に応じた等級で決まる
・給与から個人負担分が天引きされ、納付は会社経由で行う
・保険料は会社と折半できる
・年金は「基礎年金」と「厚生年金」が受け取れる
・国民健康保険にはない「傷病手当金」「出産手当金」の保障制度がある
・付加給付を受けられる場合がある

社会保険への加入は、保険料を会社と折半できるだけでなく、将来もらえる年金額が増え、保障範囲も広がるため従業員にとっては大きなメリットとなります。

企業は切り替えによるメリット・デメリットを従業員に分かりやすく説明し、制度への理解を深めることが重要です。


短時間労働者の社会保険加入の必要性と企業への支援策

今後、小規模事業者や個人事業所においても従業員の社会保障強化が求められ、社会保険の加入が義務付けられるケースが増えてきます。これは、従業員の生活の安定や安心を支えるために欠かせない措置であり、社会保障制度の適正な運用と公平性を確保する観点からも重要です。

一方で、事業主には「協会けんぽ(全国健康保険協会)」や「組合健保(健康保険組合)」への加入手続き、社会保険料の負担といった新たな責任が生じます。これらの手続きや負担を計画的に管理しなければ事業運営に支障をきたす可能性もあるため、早めの準備と対応が不可欠です。

なお、経過措置として、政府は従業員数50人以下の企業に対して以下の支援策を実施する予定です。

〇支援策の内容
社会保険料は労使折半(事業主と被保険者が半分ずつ負担)が基本ですが、措置の利用を希望する事業主は、事業主の負担割合を増やし、被保険者の負担を軽減できます。その際、事業主が追加負担した社会保険料は最大3年間、国が支援します。(ただし、3年目は軽減割合が半減)

〇対象者
従業員数50人以下の企業で働く短時間労働者の内、新たに社会保険の加入対象となる「標準報酬月額が12.6万円以下」の者

社会保険の改定で、より従業員の福利厚生が充実し、企業としても優秀な人材の確保・定着が期待できるでしょう。事業主は加入手続きや費用負担を踏まえた計画的な対応が求められますが、適用拡大による新たな責任を理解し、円滑な制度運用を目指しましょう。


在職老齢年金改正による従業員の働き方と持続可能な雇用設計

2025年の年金制度改正では、在職老齢年金の支給停止基準が引き上げられ、従業員の働き方や企業の人材活用に大きな変化が予想されます。

これまで基準を超える収入を得ると年金の一部が停止されていたシニア社員も、改正後はより多くの時間を働けるようになります。結果、経験豊富な人材が現場に残りやすくなり、技術やノウハウの継承が進むでしょう。

企業へは、シニア層の勤務延長を見据えた人事制度の整備が求められます。たとえば、賃金体系の見直しや柔軟な勤務形態の導入、健康管理支援、キャリアの再設計支援の強化などです。

また、若手との役割分担や教育機会の設計も、世代間のバランスを保ちながら戦力を最大化するうえで欠かせません。

改正内容を正しく理解し、早期に社内方針を定めることが企業にとっての競争力維持につながります。

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年金制度改定に伴う人事制度の見直しと労務管理

年金制度改定は、企業にとって人事制度全体を見直す機会となります。特に、シニア社員の就業継続が進むことを前提に、人事評価や社内規定、退職金制度とのバランス調整が必要です。

例えば、企業型DC(確定拠出年金)やDB(確定給付年金)と退職金制度を統合的に設計することで、従業員のモチベーション向上と企業コストの最適化を両立できます。

また、制度改定の内容や将来の年金見込みについて従業員が理解できるよう、説明会や個別相談の実施、社内情報共有の仕組みを整えることも不可欠です。

こうした包括的な労務管理と人材戦略を取ることで、企業は人材の確保と育成を進めながら、組織全体の持続的成長につなげることができます。

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(3)年金制度改正で人事担当者が必ず確認すべき3つのポイント

2025年の年金制度改正内容は、企業の人事・労務部門にとって従業員の加入管理や社内体制の整備、システム対応など、多方面での見直しを迫られる重要なタイミングです。

社会保険や企業年金の適用範囲拡大、マッチング拠出の手続きなど多岐にわたり、対象者や運用開始時期は制度ごとに異なります。そのため、担当者は以下の3点を柱として計画的に進めることが重要です。

①加入対象者確認と管理体制の整備
②システム改修と手続きスケジュールの把握
③社員への周知と問い合わせ対応の強化

ポイント①加入対象者確認と管理体制の整備

社会保険や企業年金の制度拡大により、新たに対象となる従業員を正確に把握し、管理体制を整えることが求められます。

企業年金では、拠出金の誤設定や届け出漏れによって、拠出総額が異なると従業員に不利益が生じます。こうした事態を防ぐためには、担当者や部門間での二重チェック体制や、拠出額変更時の管理リストの運用など、明確な業務フローがあると安心です。

また、マッチング拠出の場合は従業員からの申請に応じて手続きを行いますが、申請者が短時間労働者の場合は労働契約内容や勤務実態を確認し、加入基準に該当するかを精査する必要があります。特に、短時間労働者については、雇用契約書・シフト表・給与明細などの定期確認が必要です。(例:年1回または契約更新時など)

また、期間の定めのない無期労働契約(無期雇用)へ転換したアルバイト・パートなどの短時間労働者の場合、有期雇用と違い基本的には契約更新がなされません。そのため、無期雇用のアルバイト・パートについては、勤務実態や勤怠記録、賃金台帳などで加入基準を満たしているかの定期的な確認が必要です。

管理体制としては、人事部と現場管理者との間で情報共有フローを構築し、勤務時間や契約条件の変更があった場合に即時報告される仕組みを整えると、確認漏れの防止につながります。

ポイント②システム改修と手続きスケジュールの把握

2025年の年金制度改正は、すべてが同時に開始されるわけではなく、制度ごとに実施日が異なります。そのため、人事・労務担当者は各制度の運用開始時期を省庁の正式な発表を基に正確に把握し、前倒しでスケジュールを確定することが不可欠です。

また、給与計算システムの改修にあたっては、システムベンダーや社労士との事前打ち合わせを行い、以下のことなどを確認します。

・処理が走るタイミング
・改修後の試験運用の可否
・バックアップデータの保存方法

特に、運用開始直後の月は例外処理や臨時対応が発生しやすいため、“トラブルを前提”とした運用計画を立てておくことが重要です。処理後は必ず出力帳票や賃金台帳と突き合わせ、二重計算・未反映・他の月での処理ミスなど、事務ミスやシステム運用エラーを早期に発見できるチェック体制を構築しましょう。

ポイント③社員への周知と問い合わせ対応の強化

制度改正は、従業員にとって給与や将来の年金額に直接関わるため、不安や誤解が生じやすいものです。企業人事としては、改正内容をできるだけ平易な言葉で説明し「自分に関わる改正」が一目でわかる資料を作成して配布することが有効です。

さらに、問い合わせ対応の負担を減らすために、以下の複数チャネルでの周知を検討しましょう。

・社内ポータルにFAQを掲載する
・人事あての問い合わせフォームを周知する
・繁忙期前に説明会を開催し、資料や動画を配信する

特に、在宅ワーク従事者や短時間労働者、地方拠点勤務者など、情報が届きにくい層にも漏れなく案内が行き渡る体制を整えることが重要です。

【一覧表】いつから改定?2025年の年金制度改正スケジュール

今回ご紹介した、2025年に実施される年金制度の主な改正項目の施行スケジュールを、一覧でわかりやすくまとめました。

年金の種類 改正内容 施行時期(予定)
厚生年金(社会保険) 企業規模要件の拡大 2027年10月1日~2035年10月1日
標準報酬月額の上限引き上げ 2027年9月1日~2029年9月
個人事業所の適用拡大 2029年10月1日
(既存の事業所は経過措置あり)
在職老齢年金 支給停止基準の引き上げ 2026年4月1日
遺族厚生年金 男女差解消のための給付要件の見直し 2028年4月1日
iDeCo
(個人型確定拠出年金)
加入可能年齢の上限引き上げ 公布から3年以内の政令で定める日
企業型DC
(企業型確定拠出年金)
加入者掛金(マッチング拠出)の制限撤廃 公布から3年以内の政令で定める日

 

年金制度改正が採用市場にもたらす変化と企業の対応策

日本では労働人口の減少が続き、特に若年層の数は今後も減少し続ける見込みです。採用現場では「若手を採用したいが応募が来ない」という声が増えており、この傾向は今後さらに強まると予想されます。一方で、子育てを終えた層や経験豊富なシニア層を活用する動きが見られます。

今回の年金制度改正により、厚生年金の適用拡大や社会保険加入の義務化が進み、企業側の社会保険料の負担は必須です。特に、新型コロナウイルスの影響で業績が低迷している業界では、社会保険料の負担が経営上の課題となる可能性があります。

しかし、パートやシニア人材を「一時的な労働力」ではなく「貴重な人的資源」として位置付け、長期的な戦力化を図る企業にとっては、将来のリターンを見込める投資ともいえるでしょう。

今後は「欠員補充」や「単純作業の担当」としてパートを採用するのではなく「優秀な人材確保」や「女性・シニアの活用」を目的とした戦略的採用が求められます。

「年金制度改正」でのよくある質問(FAQ)

年金制度の改正は、特に短時間労働者や在宅ワーカー、地方勤務者など、多様な働き方をしている従業員から多くの疑問や不安の声が寄せられる傾向があります。

人事担当者は問い合わせを受けるだけでなく、あらかじめ想定した質問と回答を整理し、対応負担を減らしながら情報の正確性を保ちましょう。

Q1. 「年収106万円の壁」が廃止されるって本当ですか?

A. はい。2025年の改正により、短時間労働者の賃金要件(年収106万円の壁)は撤廃されます。

今後は収入にかかわらず、労働時間要件を満たせば社会保険の加入対象となります。

Q2. パート社員でも社会保険に入らなければならないですか?

A. 働き方にかからわず、雇用される立場の従業員は、加入要件を満たせば社会保険に加入する必要があります。

制度改正に伴い、最終的には「従業員数1人以上の企業」または「常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所」に勤務し「週20時間以上の勤務(かつ学生ではない)」に該当するすべての従業員が加入対象となります。

ただし、新たに雇用される従業員に関しては「2ヶ月以上の雇用見込み」も条件に含まれます。

Q3. 在職老齢年金の“支給停止基準額”はどう変わるのですか?

A.現在は賃金+老齢厚生年金の額が月51万円(2025年度時点)を超えると年金が減額されますが、2026年4月から支給停止基準額は月62万円に引き上げられます。

シニアが働きながら、年金を多く受け取れる設計です。

Q4. 年金受給中でも働けますか?

A. 可能です。2025年の年金制度改正では、在職老齢年金の支給停止基準が引き上げられ、働きながら年金を受け取ることがしやすくなります。

Q5. 遺族年金の性別による支給の違いは解消されるのですか?

A. はい。改正により、従来は支給対象から除かれていた「子どもがいない男性」にも遺族厚生年金の5年間の有期給付が認められ、男女間の不公平が是正されます。ジェンダー平等が進む改正内容です。

Q6. 制度改正に対応するために企業がすべきことは何ですか?

A. 対象者の把握、社内規定やシステムの整備、社員への情報提供など、段階的な準備が必要です。

Q7. 改正内容はどのような方法でどう伝えれば理解されやすいですか?

A. 専門用語を極力避け、詳細な説明や数字を図や表で示すと、従業員が直感的に理解しやすくなります。

なお、周知方法では社内ポータル・説明会・動画配信・メール・郵便などの複数チャネルを併用し、対象者の働き方に応じて使い分けましょう。

まとめ|年金制度改正のメリットを最大限活用して採用戦略に役立てよう

今回の年金制度改正は、企業と従業員の双方に大きな影響を与える重要な制度変更です。

企業には社会保険料の負担増という課題が生じますが、長期的には労働生産性の向上や人材定着率の改善といったメリットが見込まれます。

また、求人サイトに「社会保険完備」などの福利厚生情報を明記することで、求職者への魅力的なアピールとなり、採用競争力の向上にもつながります。

今後は雇用形態を問わず、すべての人材を戦略的に活用する視点が必要です。企業は今回の年金制度改正を機に、人材活用戦略や働き方の見直しを進め、持続的な成長を実現していきましょう。

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参考リンク:年金制度改正法が成立しました|厚生労働省

     iDeCoがより活用しやすく! 2024年12月法改正のポイントをわかりやすく解説 | 政府広報オンライン

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この記事の執筆者

株式会社ビースタイルメディア

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この記事の監修者

石橋聖文

株式会社ビースタイルメディア 代表取締役。1982年生まれ。立教大学卒業後にビースタイルグループに新卒一期生として入社。同社にて約17年に渡り女性のライフステージに合わせた働き方の支援と企業の人材不足の解消やコスト削減、生産性向上を実現する複数のサービス運営・事業立ち上げを経験。

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