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令和7年 扶養控除等(異動)申告書|記入例と税制改正ポイント
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この記事の監修者
石橋聖文
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年末が近づくと、企業の人事担当者は年末調整の準備に追われます。なかでも、通称“マル扶”と呼ばれる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以降、「扶養控除等申告書」)は、必ず押さえておくべき重要書類のひとつです。
本記事では、令和7年分の扶養控除等申告書について、人事担当者が知っておくべき記入のポイントや記入例などをわかりやすく解説します。
(1)令和7年最新情報|扶養控除等(異動)申告書に関わる変更点
(2)扶養控除等(異動)申告書の書き方マニュアル[記入例付き]
(3)扶養控除等(異動)申告書の提出スケジュール
(4)扶養控除等(異動)申告書を提出・記入する際の注意点と実務対応
当記事を読めば、年末調整の記載ミス防止と従業員への案内に役立ちます!
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【目次】
(1)令和7年最新情報|扶養控除等(異動)申告書に関わる変更点
令和7年の年末調整に向けて、扶養控除等申告書に関する最新情報をまとめました。毎年のように細かい制度変更や書式の改訂が行われますが、今年はどのような点に注意が必要なのでしょうか。
まずは、税制改正や新たに導入される「簡易な申告書」について、わかりやすく解説します。従業員への案内に必要な情報ですので、ぜひご確認ください。
そもそも「扶養控除」って何?どういう人が対象?人事やってるけど分からない・・・具体的に知りたい!▶【企業向け】扶養枠とは?│採用~管理がうまくいくポイントを解説
令和7年12月から施行の税制改正がある
令和7年12月より、一部の税制改正が施行される予定です。ポイントとしては、扶養控除等申告書のフォーマット差し替えは令和8年分からとなっていますので、既に従業員から提出のある令和7年分の申告書については、現行の用紙のままで問題ありません。ただし、令和7年の年末調整で改定後の控除が必要な従業員には、漏れの無いよう申告してもらう必要があります。
今回は、令和7年の所得税にかかわる部分を抜き取り、表にまとめました。
改定後 58万円~95万円
改定後 65万円
同一生計配偶者
改定後 58万円
改定後 85万円
改定後 58万円
なお、改定内容には、それぞれ詳細な要件が設けられています。実際に扶養控除を受けられるかどうかは従業員一人ひとりの状況で異なります。人事担当者は、改正内容の詳細をしっかり確認しておきましょう。
扶養控除等申告書に「簡易な申告書」が登場!今後の年末調整が楽になる
令和7年の年末調整から、新たに「【簡易対応様式】扶養控除等(異動)申告書」(以降、「簡易な申告書」)が導入されることになりました。
簡易な申告書のフォーマットは通常の扶養控除等申告書を利用しますが、申告時の書き方が異なります。通常との書き方の違いは、氏名・住所などの基本情報のみを記入するシンプルな形式で、従業員は複雑な計算や詳細な記載を省略できる点です。つまり、簡易的に申告した扶養控除等申告書のことを「簡易な申告書」と呼ぶのです。
上記画像は、国税庁の簡易な申告書の記入見本です。記入箇所は、氏名・個人番号(マイナンバー)・住所と、余白に「前年の申告内容に異動なし」や「前年から異動なし」などと記載をすれば完了です。
ただし、PC入力用フォーマットのみ、簡易な申告書に対応したファイルが用意されています。下の画像がPCで直接入力ができるフォーマット見本です。手書き用と同じく、氏名・個人番号(マイナンバー)・住所を入力し「前年の申告内容からの異動」に「なし」のチェックを入れればOKです。
なお、簡易な申告書を利用できる従業員は、前年に提出した扶養控除等申告書に記載した事項から異動がない人のみです。令和7年の場合で言うならば、令和7年の年末調整時に簡易な申告書を提出できるのは、令和6年分の扶養控除等申告書に記載した内容から変更のない人、ということです。
具体的には、以下の項目に1つでも該当する場合は、簡易な申告書を提出することができません。
なお、簡易な申告書は事業主側の判断で活用することができます。もし、導入をする場合は、導入する経緯や利用可能な時期、対象者や書き方を社内に周知しましょう。
参考:簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁、令和7年分 給与所得者の扶養控除等申告書(簡易な申告書)|国税庁、令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A|国税庁
(2)扶養控除等(異動)申告書の書き方マニュアル[記入例付き]
本章では、令和7年分の扶養控除等申告書の各項目について、国税庁の記載例に基づきながら書き方を解説します。
1. 氏名・住所など
2. 源泉控除対象配偶者・控除対象扶養親族
3. 障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生
4. 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
5. 住民税に関する事項
以下の見本画像に採番しましたので、記入内容を確認しながら実務にお役立てください。
1. 氏名・住所など
申告書の冒頭、基本情報を記入する欄です。誤記がないか慎重に確認しましょう。
①所轄税務署長等
給与の支払者の所在地等の所轄税務署長と、申告する従業員の住所地等の市区町村長を記載します。
税務署名は勤務先であらかじめ記入する場合もあります。
②給与の支払者の名称・所在地・法人番号
自社の住所・所在地・法人番号を記入します。個人事業主の場合は、氏名・住所・個人番号(マイナンバー)を記入します。
法人番号または個人番号については、申告書を受理した給与の支払者が付記するため、従業員に記入してもらう必要はありません。
③個人番号
申告する従業員の個人番号(マイナンバー)12桁を記入します。ただし、一定の要件の下、記載を省略できる場合があります。
【マイナンバーの記載を省略できる条件】
〇帳簿(マイナンバー台帳等)がある場合
→帳簿に当該申告書の名称や提出年月などを記録し、申告書と紐づけて管理している場合、申告書への個人番号の記載は不要です。
〇従業員の申告、確認記録がある場合
→従業員本人が申告書の余白などに「マイナンバーは給与支払者に提供済みで、変更なし」などと記載し、給与支払者側で「確認した旨」を申告書上に記録している場合も記載の省略が可能です。
本来、扶養控除等申告書には、従業員本人や控除対象となる配偶者・控除対象扶養親族等のマイナンバー(個人番号)の記載が必要です。しかし、先述の対応がきちんとなされていれば、扶養控除等申告書のマイナンバー欄は省略することが可能となっています。
記載してある申告書は、マイナンバーが第三者に見られないよう、取り扱いに十分注意してください。
④住所または居所
申告者本人の住所は、“年末調整後の翌年1月1日に住民票のある住所”を記入します。
令和7年分の扶養控除等申告書の場合では、年末調整は2025年12月実施分、翌年1月1日は2026年1月1日のことを指します。
つまり、“2026年1月1日時点で住民票のある住所”を記入することになります。
申告の住所は、翌年(2026年)の住民税の納付先(住民税を徴収する市区町村)として扱うため、もし、令和7年中に引越しをした従業員がいる場合は、住所欄を書き直してもらう必要があります。
なお、扶養控除等申告書の住所欄は、意外と誤って書かれるケースが多い箇所です。理由は、実際に住んでいる居住場所と、住民票のある住所が異なるケースがあるからです。
【住所の記入で間違いやすい・悩みやすいパターン】
〇年末調整前に引越しをした
→1月1日以前に引越しをしているため『引越し後の住所』を記載
〇年末調整前に引越しをしたが、住民票を移していない
→引越し後に住民票を移していなくても『引越し後の住所』を記載
〇単身赴任中の従業員
→住民票を単身赴任先に変更している場合は『単身赴任先の住所』を記載
住民票が元の自宅(家族のいる住所地)のままの場合も『単身赴任先の住所』を記載
住民税は「その市町村に住所を有する個人」を納税義務者としており、ここで言う住所とは、生活の本拠地のことです。原則として、住民票は引越しの都度移す必要がありますが、もし住民票を移していない場合でも、生活の本拠地である市区町村に住民税を納めます。
⑤従たる給与についての扶養控除等申告書の提出
自社以外に他社からも給与を受け取っていて、かつ他社から支給された給与が「従たる給与※2」に該当する場合は、記入箇所に〇印を付けて扶養控除等申告書の提出先を明確にします。
扶養控除等申告書は原則「主たる給与※3」を受け取る勤務先にのみ提出可能です。
複数の事業主から給与の支払いがある従業員は、基本的には主たる給与を受け取る会社で年末調整を行います。そのため、従たる給与を受け取る会社では年末調整はせず、従たる給与分は自身で確定申告を行う必要があります。
副業をしている従業員や〇印をつけた従業員に確認をして、自社の給与が主たる給与であるかを確認しましょう。
※2 従たる給与|主たる給与の支払者以外が支払う給与のことで、源泉徴収税額は税額表の乙欄となる
※3 主たる給与|「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与のことで、源泉徴収税額は税額表の甲欄となる
2. 源泉控除対象配偶者・控除対象扶養親族
「源泉控除対象配偶者・控除対象扶養親族」の欄では、年末調整で控除の対象となる配偶者や扶養親族の情報を記入します。
①源泉控除対象配偶者
配偶者(特別)控除の対象となる、生計を一にする配偶者がいる場合に、氏名・生年月日・個人番号・令和7年中の所得見積額などを記入します。
申告する配偶者の個人番号(マイナンバー)は、申告者本人のマイナンバーと同様の扱いで、一定の要件の下、記載を省略できる場合があります。
【源泉控除対象配偶者を申告できる条件】
・申告する本人:令和7年中の合計所得金額の見積額が900万円以下の人
・生計を一にする配偶者:令和7年中の合計所得金額の見積額が95万円以下の人(かつ青色事業専従者として給与の支払を受ける人および白色事業専従者を除く)
なお、年末調整において配偶者(特別)控除の適用を受けるには、源泉控除対象配偶者欄の記載の有無に関わらず、別紙の「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出が必要です。
②控除対象扶養親族
扶養親族がいる場合、氏名・生年月日・個人番号・令和7年中の所得見積額などを記入します。
申告する扶養親族の個人番号(マイナンバー)は、申告者本人のマイナンバーと同様の扱いで、一定の要件の下、記載を省略できる場合があります。
扶養親族のうち、次に該当する人は申告が可能です。
【控除の申告ができる扶養親族の範囲】
・扶養親族が居住者※4の場合:年齢16歳以上の人(平成22年1月1日以前に生まれた人)
・扶養親族が非居住者※5の場合、次の①~③いずれかに該当する人
①年齢16歳以上30歳未満の人(平成8年1月2日~平成22年1月1日生まれの人)
②年齢70歳以上の人(昭和31年1月1日以前に生まれた人)
③年齢30歳以上70歳未満の人(昭和31年1月2日~平成8年1月1日生まれの人)のうち「留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人」、「障害者」または「申告者本人から令和7年中において、生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人」
老人扶養親族や特定扶養親族、非居住者である親族については、該当する区分にチェックを入れます。
また、非居住者である親族については、その親族に係る以下の書類を別途用意してもらい、給与の支払者に提出または提示する必要があります。
【非居住者である親族について、扶養控除等】
・親族関係書類
・留学ビザ等書類
・送金関係書類または、38万円送金書類
※4 居住者|所得税法では、国内に住所がある、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する人。
※5 非居住者|国内に住所を有せず、かつ現在まで引き続いて1年以上国内に「居所」を有しない人。
3. 障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生
障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除に該当する場合は、それぞれの区分を明記します。障害者や勤労学生については、該当する内容(特別障害者・一般障害者など)も記載します。必要に応じて従業員に証明書類の添付をしてもらい、事実と相違ないかを確認しましょう。
①障害者
本人または扶養親族が障害者に該当する場合は、該当区分(一般・特別・同居特別)に応じてチェックします。
なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない年齢16歳未満(平成22年1月2日以後生)の扶養親族も対象で、控除対象扶養親族とは異なりますので注意が必要です。
【障害者区分】
・本人欄:申告者本人が障害者に該当する場合にチェック
・同一生計配偶者:一般の障害者・特別障害者・同居特別障害者に該当する場合にチェック
・扶養親族:一般の障害者・特別障害者・同居特別障害者に該当する場合にチェック
②寡婦・ひとり親・勤労学生
本人が寡婦、ひとり親、勤労学生に該当する場合にチェックします。
③障害者又は勤労学生の内容
障害者や勤労学生に該当し『①障害者』の章で説明した、用紙左のチェックボックスに何かしらのチェックを入れた場合は、該当する内容(特別障害者・一般障害者など)を赤枠内に記載します。記入内容は従業員に添付してもらった証明書類にて、事実と相違ないかを確認します。
なお、障害者または勤労学生の内容には、それぞれ次の事項の記載が必要です。
【障害者(特別障害者)】
〇障害の状態または交付を受けている手帳などの種類・交付年月日・障害の程度(障害の等級)などの障害者(特別障害者)に該当する事実
〇同一生計配偶者または扶養親族の場合は、併せて当人の氏名・特別障害者であるときは同居の有無・マイナンバー(個人番号)・住所または居所・生年月日・本人との続柄・令和7年中の所得の見積額(これらの事項のうち「源泉控除対象配偶者」欄・「控除対象扶養親族」欄・「住民税に関する事項」欄に記載している事項について、氏名以外は記載を省略できる)
〇当該同一生計配偶者または扶養親族が非居住者である場合には、その旨及び令和7年中にその同一生計配偶者または扶養親族に送金等をした金額の合計額(金額の合計額は、年末調整時に記載)
【勤労学生】
〇学校名・入学年月日・令和7年中の所得の種類と見積額
なお、個人番号(マイナンバー)は、申告者本人のマイナンバーと同様の扱いで、一定の要件の下、記載を省略できる場合があります。
4. 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
申告者本人の同一生計内に所得者が2名以上いるときは、本人の扶養親族等※6を他の所得者の扶養親族等としたり、扶養親族等を分けて控除を受けたりすることができます。
つまり、上図の上段ように、同一生計内に家計を支える人が別途いる状況で、本人が扶養控除の申告をせず、他の同一生計者が扶養控除を受ける場合に、扶養者情報(扶養家族A)を記載します。
また、図の下段のように、扶養者が複数いる場合で複数の同一生計者で扶養控除を分けて申告する場合も、申告者本人が扶養申告しない方の扶養者情報(扶養家族C)についても記載が必要です。
二重に控除が適用されることを防ぐため、他の所得者の氏名・続柄などは正確に書きます。
※6 扶養親族等の範囲|控除対象配偶者・控除対象扶養親族・障害者である同一生計配偶者・年齢16歳未満の扶養親族
5. 住民税に関する事項
16歳未満の扶養親族は所得税の扶養控除の対象外ですが、住民税の計算に使用されます。そのため、この欄に氏名や生年月日のほか、国外扶養親族や退職手当等を有する配偶者・扶養親族、非居住者である親族について申告します。
また、令和7年中の所得見積額(退職所得を除く)や障害者区分・寡婦・ひとり親の有無も正しく記載しましょう。
①16歳未満の扶養親族(所得税の扶養控除対象外)
年齢16歳未満(平成22年1月2日以後生)の扶養親族について記載します。16歳未満の扶養親族に所得がある場合は、令和7年中の所得見積額を記載します。
なお、所得税の扶養控除対象外となる16歳未満の親族でも、令和8年分の住民税の計算には影響するため、漏れの無いように書いてもらいましょう。16歳未満の扶養親族については、児童(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子)を養育している人に対して児童手当が支給されているため、所得税における「扶養家族等」からは外れています。
【控除対象外国外扶養親族】
〇国外に居住する16歳未満の扶養親族である場合は〇をつけます。
〇控除対象外国外扶養親族に該当する場合、従業員は親族関係書類や送金関係書類を令和8年3月16日までに住所所在地の市区町村(住民税の徴収元)に提出しなければならないケースがあります。
②退職手当等を有する配偶者・扶養親族
退職手当等の支給を受ける生計を一にする配偶者(令和7年中の退職所得を除いた所得の見積額が133万円以下)や、扶養親族がいる場合に記入します。
③寡婦又はひとり親
“退職所得を除くと令和7年中の合計所得金額の見積額が48万円(令和7年12月1日以後は58万円)以下となる扶養親族”がいる場合で、申告者本人が寡婦またはひとり親に該当する場合にチェックします。
以上が、扶養控除等申告書の書き方についてです。改正がある度にフォーマットや書き方、控除額などが変更になりますので、いつでも最新の情報をキャッチして対応漏れの無いように注意しましょう。
なお、先述しましたが、令和8年分の扶養控除等申告書はフォーマットが差し替えとなります。既に従業員から提出のある令和7年分の申告書については、現行の用紙のままで問題ありません。ただし、令和7年の年末調整で改定後の控除が必要な従業員は、漏れの無いよう申告してもらう必要があります。
参考:各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)|国税庁、令和7年分 給与所得者の扶養控除等申告書|国税庁、No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収|国税庁、No.2875 居住者と非居住者の区分|国税庁
(3)扶養控除等(異動)申告書の提出スケジュール
扶養控除等申告書の提出期限は、年末調整のスケジュールと密接に関わってきます。
事業者は回収した扶養控除等申告書や保険料控除申告書などの年末調整書類をもとに年末調整を実施し、1年間の所得税の過不足分を原則翌月10日(1月10日)までに精算します。回収した申告書は、給与の支払者である事業者が保管し、例外的に税務署長や市区町村長から提出を求められれば提出しますが、原則7年間の保管が必要です。
対して従業員は、年末調整時に“昨年の年末調整で提出した当年分の扶養控除等申告書の内容に異動がないかを確認のうえ会社に再提出”し、“翌年分の扶養控除等申告書”も同時に提出します。年末調整時には、提出済みの当年の扶養控除等申告書を従業員に渡し、最終チェックとして異動や記入漏れがないかを確認してもらいましょう。
ただし、原則として、身上に異動があった際には異動した日以降の“最初の給与支給日の前日”までに、異動内容を記載した申告書の提出が必要です。
【扶養控除等申告書の提出スケジュール】
〇在籍社員→会社
令和7年年末調整時:令和7年+令和8年 扶養控除等申告書の提出
令和8年年末調整時:令和8年+令和9年 扶養控除等申告書の提出
〇年の途中で入社した社員→会社
令和7年入社時:令和7年 扶養控除等申告書の提出
令和7年年末調整時:令和7年+令和8年 扶養控除等申告書の提出
令和8年入社時:令和8年 扶養控除等申告書の提出
令和8年年末調整時:令和8年+令和9年 扶養控除等申告書の提出
会社側の手続きが遅れると最悪の場合、年末調整が実施できず、従業員が自分で確定申告を行わなければなりません。提出をしてこない従業員に対しては何度でもリマインドをかけ、遅れることがないよう注意しましょう。直前になって焦って作業をしなくて済むよう、日程にはゆとりを持って行うことをおすすめします。
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(4)扶養控除等(異動)申告書を提出・記入する際の注意点と実務対応
所得税の計算に欠かせない扶養控除等申告書は、毎年必要な提出書類でありつつも、年に一度しか提出しないために、正しい提出や記入についてなかなか浸透しません。なかには書き方が分からず、毎年のように人事に問合せをしてくる従業員も少なからずいるでしょう。
特に、令和7年は税制改正があったり簡易な申告書の導入が進められたりと、従業員に事前の説明をしなければならないケースも出てきます。
本章では、基本的な注意点から今年の実務で特に注意すべき3つのポイントを解説します。
注意点1:扶養控除等(異動)申告書を提出する対象範囲
注意点2:「簡易な申告書」に書かれない金額の扱い
注意点3:毎年「簡易な申告書」を提出した場合の“過去の申告書”の扱い方
注意点1:扶養控除等(異動)申告書提出の対象範囲
扶養控除等申告書の提出対象者は、基本的に雇用主に雇われているすべて従業員です。しかし、なかには提出対象外の従業員もいるので注意が必要です。
従業員の状況により、扶養控除等申告書の提出を求める・求めないを判断する必要があります。判断が迷いがちなパターンを、3つに分けて分かりやすく説明します。
扶養控除申告書は回収する?しない?3つのパターン
パターン1:扶養控除等申告書の提出・年末調整ともに対象となる人
①年の中途で就職し、年末まで勤務している人
②年の中途で退職した人のうち、次のいずれかに該当する人
(a)死亡退職の人
(b)障害を負い本年中に再就職をしないことが見込まれる人
(c)12月給与の支給を受けた後に退職日が到来する人
(d)他の勤務先等から給与支給のないパートタイマーで、支給総額が103万円以下である人
(e)年の途中で非居住者となった人
パターン2:扶養控除等申告書の提出は対象で年末調整は対象外となる人
①1年間の給与総額が2,000万円を超える人
②年の途中で退社した人(パターン1の②に該当しない場合に限る)
③災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収で徴収猶予や還付を受けた人
④非居住者※7
パターン3:扶養控除等申告書の提出・年末調整ともに対象外
①2ヶ所以上から給与の支払いがあり、すでに他方で扶養控除等申告書を提出した人
②継続して同一の雇用主に雇用されないいわゆる日雇労働者など
※7 年の途中で海外支店等に転勤し、1年以上の予定で海外に赴任することになった人は「非居住者」となり、原則として年末調整の対象外です。ただし、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円以下であり、かつ出国前にその年分の給与の全額が支払われる場合には、提出済みの扶養控除等申告書をもとに、出国前に年末調整を行う必要があります。
参考:Ⅱ年末調整とは|国税庁
年末調整はしないのに、なぜ扶養控除等申告書を回収するの?
上記の、パターン2【扶養控除等申告書の提出は対象で年末調整は対象外となる人】について「なぜ年末調整は対象外なのに扶養控除等申告書の提出は必要なのか?」というと、“主たる給与※3を受け取る勤務先に従事している場合、年末調整をしない人であっても扶養控除等申告書の提出は対象”であるからです。
そもそも、扶養控除等申告書は、主たる給与を支払う勤務先が税額表の甲欄で源泉所得税を徴収するために、従業員に提出してもらう意味合いを持ちます。そのため、扶養控除等申告書の提出対象であれば、仮に年末調整の対象外になったとしても、提出してもらう必要があるのです。
つまり、扶養控除等申告書は出してもらうけれど、なかには“結果的に年末調整をしないことになった従業員もいる”、ということです。
2ヶ所以上の勤務先から給料をもらっている人には要注意
企業側が特に気を付ける必要があるのは、パターン3【扶養控除等申告書の提出・年末調整ともに対象外】の【①2ヶ所以上から給与の支払いがあり、すでに他方で扶養控除等申告書を提出した人】に該当する従業員です。
仕事を掛け持ちしていて、複数の企業から給料をもらっている人は珍しくありません。他の会社に扶養控除等申告書を提出している場合、自社は従たる給与※2を支払う勤務先に該当します。そのため、従業員から扶養控除等申告書を回収する必要はありません。
もし、仕事を掛け持ちしている従業員がいれば、他の勤務先に扶養控除等申告書が提出済みであるかを確認します。そして、もし既に他社へ提出済みであれば、給料から差し引く所得税は乙欄の徴収となること、年末調整は実施せず自身で確定申告が必要になることを、従業員に説明しましょう。
なお、例外的に従たる側で控除を取る手続きが無きにしも非ずですが、一般論としては主たる側でのみ扶養控除等の控除を行います。
また、派遣社員も扶養控除等申告書の回収は行いません。派遣社員の雇い主は派遣会社であるため、扶養控除等申告書の提出先も派遣会社になります。ただし、派遣社員であった人が直接雇用(かつ主たる給与の支払者)に切り替わった際には、新たに扶養控除等申告書を回収する必要があります。
参考:No.2517 海外に転勤する人の年末調整と転勤後の源泉徴収|国税庁、Ⅱ年末調整とは|国税庁
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注意点2:従業員が「簡易な申告書」に書かない金額の扱い
令和7年から導入される「簡易な申告書」は、前年の申告内容と比較して変更がない場合に限り使用でき、氏名・住所などの基本情報と、前年から内容に変更がない旨のみを記入します。そのため、本人と扶養親族の所得見積額は記入が省略されるため、扶養控除等申告書には金額が記載されません。
ここで、1つの疑問が浮かびます。それは「扶養控除等申告書に書く申告者本人や扶養親族の所得の見積額は、毎年変動する可能性があるのでは?」という疑問。所得金額に変動があるなら、簡易な申告書は提出できないのでは?と思うでしょう。
しかし、所得の見積額については、“一定の条件のもと、前年に提出した扶養控除等申告書に記載した事項から異動がないものとして扱ってよい”ことになっています。具体的には、以下の条件に当てはまる人が、簡易な申告書を提出できます。
【簡易な申告書の提出条件】
①源泉控除対象配偶者の所得の見積額が95万円以下である人
②次に掲げる人の所得の見積額が58万円以下である人
(a)控除対象扶養親族及び年少扶養親族
(b)障害者である同一生計配偶者のうち、控除対象配偶者に該当しない人
③控除対象扶養親族以外の源泉控除対象親族の所得の見積額が58万円超100万円以下(給与収入123万円超165万円以下)である人
④(特別)障害者控除の対象となる人の障害の程度(等級)等に変動があった人
⑤勤労学生控除の適用を受けている場合で、所得の見積額が85万円以下であり、かつ、その所得の見積額のうち事業所得・給与所得・退職所得・雑所得以外の所得の見積額が10万円以下である場合
簡易な申告書には所得見積額を記載しませんが、企業側は前年の申告内容を参照しつつ、実際の所得情報を補完しなければなりません。
金額を正しく反映できない場合、控除が誤って適用されるリスクがあるため、従業員への事前説明と確認作業が重要となります。
注意点3:簡易な申告書を提出した場合の“過去の申告書”の扱い方
簡易な申告書の保管期限は、扶養控除等申告書と同じく「その申告書等の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間」と定められています。
通常、前年の扶養控除等申告書の記載内容から異動がないかを確認しますが、毎年連続で簡易な申告書が提出される場合には、最後に提出を受けた簡易な申告書以外の扶養控除等申告書の内容が把握できるようにしておく必要があります。
誤って破棄しないよう、綴り方や保管方法には注意しましょう。
「扶養控除等申告書」関連でよくある質問(FAQ)
「給与所得者の扶養控除等申告書」や「簡易な申告書」に関しては、実務上迷いやすいポイントが多くあります。
ここでは、企業の人事や担当者が直面しやすい質問とその回答を整理しました。
Q1. 退職した従業員の扶養控除等申告書は破棄していいの?
A. 退職後も申告書は破棄せずに保管する義務があります。税務調査で過去分の確認を求められる場合があるため、法定保存期間(原則7年)はきちんと保管してください。
Q2. 扶養控除等申告書のフォーマットは毎年使い回してもいいの?
A. 前年の申告書フォーマットをそのまま流用することはできません。毎年、国税庁が定める最新の申告書用紙で従業員から提出してもらう必要があります。
Q3. 扶養控除等申告書と簡易な申告書の保管期限は?
A. 扶養控除等申告書も簡易な申告書も同じ7年間の保管が必要です。簡易様式であっても、正式な税務書類にあたるため、途中で廃棄することはできません。
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Q4. 簡易な申告書の提出を受けた場合の「配偶者の合計所得」のチェック方法は?
A. 「簡易な申告書」では所得金額の記載は省略されます。しかし、従業員が「前年から変更なし」と申告した場合でも、担当者は「配偶者控除等申告書(基・配・特・所)」をもとに配偶者の所得が控除限度額を超えていないか確認し、年末調整に反映させる必要があります。
Q5. 個人番号(マイナンバー)は必ず書いてもらった方がいい?
A. 扶養控除等申告書のマイナンバー欄は、必ず記入してもらうようにしてください。ただし、従業員から変更ない旨の申告やマイナンバー台帳等がある場合など一定の要件を満たしていれば、記載を省略できます。
Q6. 扶養者が多くて1枚に書ききれない人はどうすればいい?
A. 扶養控除等申告書をもう一枚用意し、上部の基本情報と併せて追加の箇所を記入してください。提出された複数の申告書は、合わせて保管します。
Q7. 令和7年の税制改正により扶養控除等申告書はどのように変わる?
A. 令和7年12月から施行される税制改正に伴い、扶養控除等申告書の様式が見直されます。令和8年の扶養控除等申告書では「B 控除対象扶養親族(16歳以上)」の欄が「B 源泉控除対象親族(16歳以上)」に変わる予定です。
ただし、令和7年の申告書は従来通りとなりますので、令和7年に実施する年末調整では税制改正後の新制度について、従業員に対して適切な申告方法の案内が必要となります。
まとめ|扶養控除等申告書の正しい書き方と年末調整の実務ポイントを押さえよう
扶養控除等申告書を作成するのは、控除の対象となる従業員本人です。しかし、事業者も年末調整を行ううえで必須の書類ですので、従業員任せにしていてはいけません。扶養控除等申告書の回収が遅れると、年末調整に間に合わないばかりか、納税が遅れれば最悪の場合、罰則の対象にもなってしまいます。
近年は便利な会計ソフトや給与計算周りをアウトソーシングできる業者も増えてきましたが、自社の従業員から書き方や控除対象について聞かれた際には、しっかりと受け答えができるよう、最低限の知識は身につけておきましょう。
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参考:扶養控除等(異動)申告書とは?書き方・提出先・提出期限などを解説|労務SEARCH
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