雇用管理・マネジメント
ワークシェアリングとは?成功事例とメリット・デメリットを解説
- 更新日:
主婦/主夫に専門特化した「しゅふJOB」
企業成長に必要なパート人材を採用しませんか。
年間1000万人以上が集まり、導入企業様数2万社以上の”主婦/主夫採用”に特化した
求人媒体しゅふJOB。
NHKをはじめ日経新聞、雑誌などにも多く取り上げていただき、
また革新的な優れたサービスを表彰する「第3回 日本サービス大賞」において
「厚生労働大臣賞」を受賞しました。
しゅふJOBでは、プロのライターが求人原稿作成を無料支援。
人材に合った最適な求人原稿を、カンタンですぐに掲載できます。
また掲載課金だと1週間12,000円~で即採用も可能!
費用対効果が高くお客様にご好評いただいているプランになります。
<ご利用企業様のお声>
「応募数、求職者の就業意欲に満足!他媒体に比べ圧倒的に応募が多い」
「学生より主婦/主夫層の応募が欲しい、そんな時しゅふJOBが解決してくれた」
「法律関連の情報もすぐに発信してくれて助かる」
まずはお気軽にホームページをご覧ください。

この記事の監修者
石橋聖文
人気の記事
-
しゅふJOB・メソッド
求人募集しても人が来ない会社とは?3つの原因と応募を増やす方法を解説
求人を募集をしているのに人が来ない会社とは?採用担当者が気になる点ではないでしょうか。 求人広…
-
しゅふJOB・メソッド
【企業向け】パート・アルバイトを業務委託に変更した事例をご紹介
2020年は新型コロナ感染拡大を受け、昨今の「働き方改革」の推進以上に、大きく変化をもたらしました。…
-
しゅふJOB・メソッド
応募課金型の求人サイトとは?メリットやデメリットを事例を交えて解説
「できるだけ無駄な費用なく採用活動を進めたい」「応募がこなくて掲載料だけとられる状況に不満がある」と…
-
しゅふJOB・メソッド
ハローワークで応募が来ない!その原因と対策、成功ノウハウをご紹介
ハローワークは企業にとっては広告費がかからないため採用活動において強い味方です。 求職者が失業…
-
しゅふJOB・メソッド
しゅふJOB|企業様向け管理サイトのログイン方法
この記事ではしゅふJOB 管理サイトの具体的な活用方法を紹介いたします。 掲載4日で10名の応…
-
しゅふJOB・メソッド
テレアポ業務・カスタマーサポートセンターを完全リモート化!成功事例
新型コロナをきっかけに様々な業務のリモートワーク化が急速に進みました。ですがリモートワーク化が難しい…
-
採用方法
即戦力人材の採用、その鍵は『主婦・主夫層』?│採用メリットを解説<パート・アルバイト>
パート・アルバイトで即戦力採用を行いたいが、売り手市場の昨今、自社が求める希望の人材からの応募を集め…
-
しゅふJOB・メソッド
新人研修も完全オンラインで!内容・メリット/デメリット・注意点は?参加した新入社員、上司の感想をご紹介します
2020年4月、求人サイト「しゅふJOB」運営元である、株式会社ビースタイルメディアには4名の新入社…
-
しゅふJOB・メソッド
検索ワード1位の「在宅」|勤怠の安定した在宅スタッフの活用術を解説
主婦/主夫採用に特化した求人媒体「しゅふJOB」のフリーワード検索の一位は常に「在宅」。 この…












「慢性的な人手不足に悩んでいる」
「従業員の長時間労働を是正したいが、業務が回らなくなる」
「多様な働き方を導入し、採用力を強化したい」
上記のような課題を抱える企業の採用・人事担当者の方の解決策の一つとして、再注目されているのが 「ワークシェアリング」 です。
当記事では、以下のことを最新の統計や事例を交えながら解説します。
(1)ワークシェアリングとは?
(2)ワークシェアリングを企業の課題別に使い分ける4つの種類
(3)ワークシェアリングのメリット・デメリット
(4)ワークシェアリングの導入手順
(5)ワークシェアリングの事例紹介
人手不足や長時間労働といった自社の課題に合うワークシェアリングの導入ポイントを分かりやすく解説しており、採用や人材活用の新たな戦略に役立てられます。
ワークシェアリングは主婦・主夫層と相性抜群!
▶︎主婦・主夫採用に特化!求人サイト「しゅふJOB」の資料を無料ダウンロード
【目次】
ワークシェアリングとは?
ワークシェアリングとは、1つの業務や1人にかかる労働時間を複数の労働者で分け合う働き方を指します。具体的には、雇用の基本要素となる「雇用機会」「労働時間」「賃金」の3つの要素を分けるという意味です。
ワークシェアリングの主な役割として、継続した雇用を守ることや雇用の創出、働き方を柔軟にすることが挙げられます。
ほかにも、慢性的な人手不足の下で短時間労働者を組み合わせて必要な労働力を確保する、従業員のワークライフバランス向上といった目的でも活用されます。
なぜ今、ワークシェアリングが注目されるのか
近年では少子高齢化による人手不足・働き方改革の推進・テレワークの普及などを背景に、持続可能な組織をつくる手段としてワークシェアリングが再評価されています。
企業にとって日本の経済において重要視されているワークシェアリングですが、その背景にはどのような課題があるのか、具体的な背景を洗い出していきます。
少子高齢化と生産年齢人口の減少
日本では総人口の減少と同時に少子高齢化の加速が止まりません。2024年に内閣府が公表した高齢社会白書によると、2070年には日本の総人口の2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上という衝撃的な推計がなされています。
現在でも生産年齢人口の減少が続いており、あらゆる業界で人手不足が叫ばれています。
いつでも人手不足。実は原因をきちんと把握していないかも!?▶飲食店の人手不足の原因10選|今すぐできる7つの解決策とは
働き方改革と多様な人材活用
時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金の考え方が浸透するなか、従来の「長時間・固定的」な労働環境が通用しにくくなり、働き方改革によって柔軟な労働環境の整備が求められています。
2025年に内閣府が公開した上記資料によると、2024年の日本の労働力人口は6,957万人で、そのうち65~69歳は400万人、70歳以上は546万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の割合は13.6%にも及びます。つまりは、65歳以上の働き手が日本の労働力の約1割以上を占めており、現役世代の減少を補う重要な担い手となっているのです。
女性や主婦・主夫層では、働くことを希望していながらも育児や介護などでライフステージが変わりやすく、フルタイム勤務が短時間勤務や柔軟なシフト制を設けることで、潜在的な労働力を引き出す取り組みが求められています。
企業が持続的に成長するためには、従来の正規雇用者だけでなく女性・主婦・主夫・高齢者・障害者・外国人労働者など多様な人材の活用が不可欠です。
景気変動と雇用維持の必要性
需要が急減した際、雇用調整を解雇だけに頼ってしまうと、景気が回復した時の採用コストや技能・スキルの断絶が大きな負担になります。ワークシェアリングは、一時的に労働時間やシフトを調整することで雇用を維持し、景気回復期に素早く状態を戻せる柔軟性を持ち合わせています。
企業にとって勤務する従業員は貴重な資産です。特に、従業員のスキルや技能に偏る産業や業務においては、一度人材を失えば再び同水準の人材を確保するのが難しく、生産性やサービス品質の低下につながりかねません。
そのため、景気変動時においてもワークシェアリングを活用することで、人材を守りつつ企業の競争力を維持できる点が大きな意義といえます。
ワークシェアリングを企業の課題別に使い分ける4つの種類
ワークシェアリングは「雇用機会」「労働時間」「賃金」の3つの要素をより多くの労働者で分け合うことを主とした働き方です。
厚生労働省では、ワークシェアリングを4つの種類に分け、状況に応じた活用や推進を行っています。
1. 雇用維持型(緊急避難型)
2. 雇用維持型(中高年対策型)
3. 雇用創出型
4. 多様就業対応型
1. 雇用維持型(緊急避難型)
雇用維持型(緊急避難型)は、景気後退・突発的な需要減・災害などの一時的な経済の悪化や業務量の縮小に直面した際、従業員一人当たりの所定内労働時間を短縮して雇用を維持するタイプです。
つまりは、解雇や早期退職制度に頼らずに、企業が従業員を守るための雇用維持対策です。緊急避難型のため、業務量が戻る見込みがある場合に効果的で、以下の対策を組み合わせて運用します。
【緊急避難型の主な対策】
・シフトの圧縮
・交替制の見直し
・残業の抑制
2. 雇用維持型(中高年対策型)
雇用維持型(中高年対策型)は、中高年層の雇用を確保するために導入される手法です。
中高年層にあたる従業員の所定内労働時間を短縮することで、以下の効果が期待できます。
・健康負担を抑えながら就業を継続できる
・経験豊富な人材を長期スパンで確保できる
・スキルや経験を若年層の育成機会を作ることが可能
3. 雇用創出型
雇用創出型は労働時間を短縮し、失業者に対して雇用の機会を設けるタイプです。国や企業単位で労働時間を調整します。
既存の従業員の労働時間を調整して新たな勤務ポジションを配置することで、働きたくても働けない人や失業者などの潜在労働力(育児・介護中、学業との両立者、シニアなど)を呼び込めます。
4. 多様就業対応型
多様就業対応型は、正社員(正規雇用)の勤務形態に短時間勤務を新たな労働条件として設け、主婦・主夫やシニア層などの求職者に雇用の機会を与える方法です。
雇用維持型や雇用創出型とは色が異なり、やむを得ない雇用調整ではなく、従業員の働きやすさを実現する前向きな施策として運用されます。そのため、従業員のライフイベントやキャリア志向に合わせて、柔軟に取り入れることができます。
ワークシェアリングのメリット・デメリット
ワークシェアリングを導入するにあたり、企業と従業員の双方が特性を理解しておくことが重要です。企業は「組織の安定」「生産性の維持」「多様な人材活用」を目的に導入を検討するため、以下のメリットとあわせてデメリットも把握し、運用設計を行うことが求められます。
企業側のメリット
企業にとって、ワークシェアリングは経営安定や人的資源の有効活用に寄与する施策です。以下はその主要なメリットです。
・雇用の維持および離職・流出防止
・採用費用の抑制と採用率の向上
・多様な人材(主婦・主夫、シニアなど)の活用促進
・長時間労働の是正による生産性向上と従業員の心身ケア
・SDGsや働き方改革に基づく企業イメージの向上
上記の効果により、企業は景気や業績の変動時にも人材を守ることができます。
特に、多様な働き手の活用は、人材不足が叫ばれる採用市場において戦略的価値が期待できるでしょう。
企業側のデメリット
メリットがある一方で、ワークシェアリングには制度設計の難しさやコスト増などのリスクも存在します。導入前に準備をし、対策を講じながらの運用が不可欠です。
・導入前の業務整理・給与の見直し・制度整備に時間と工数がかかる
・業務の分散による引継ぎや管理タスクで生産性が一時低下
・複数人で業務を担当することによる責任の所在が曖昧
・雇用者数増加に伴う労働コスト(給与や社会保険など)の増加
ワークシェアリングを導入する際は、上記のような潜在的・顕在的な負担を可視化し、スムーズな移行の計画を立てることがカギとなります。特に、業務分担の仕組みを導入前にシミュレーションし、対応すべき業務を明確にすることが重要です。
また、以下のような改善策をあわせて検討すると、デメリットを最小化できます。
〇労使協議を重ね、制度の透明性を高める
→労働者側を納得させるために、導入前に説明会や意見交換の場を設け、合意形成を丁寧に行うことが必要です。
〇給与・社会保険コストを見直す
→制度設計時に、短時間労働者の給与や社会保険料負担を考慮した人件費試算を行いましょう。場合により、助成金の活用が有効です。
〇業務の効率化と生産性向上を並行して進める
→単なる労働時間の分割にとどまらず、ITツールの導入や業務フロー改善を行い生産性を高めることで、短時間勤務でも成果を維持できます。
〇責任の所在を明確化する
→複数人で業務を担当する際は、業務マニュアルや進捗管理ツールを活用し、業務分担を明確にすることで、事務ミスなどがあった際にトラブルを回避できます。
上記のように、各方面でのトラブルをあらかじめ想定し、具体的な対策を講じることで、企業は制度移行期の混乱を抑えることができます。人事担当者には、マネジメントスキルと制度設計力に加え、労務知識やコミュニケーション力も求められます。
従業員側のメリット
従業員にとってワークシェアリングは、働きやすさや雇用の安定を高めるメリットがあります。
・長時間労働の削減によるワークライフバランスの改善
・心身の負担軽減による健康維持
・就業場所の確保と生活の安定
・余暇時間の増加でモチベーションアップ
・育児・介護・学業などとの両立が可能
これらのメリットにより、従業員は安心して働き続けることができ、結果として企業へのエンゲージメント向上や離職率低下にもつながります。
特に、フルタイムが叶わない事情を抱える人や、介護や育児との両立を重視する人にとって魅力的な制度と言えるでしょう。
従業員側のデメリット
従業員がワークシェアリングを利用する場合、勤務時間や働き方が変わることにより、不利益が生じる可能性もあります。そのため、制度を導入する際には従業員目線での制度説明と配慮が欠かせません。
・労働時間の縮小による収入減の可能性
・業務が限定的になり、スキル習得の減少やキャリア形成の鈍化
・給与や評価制度との整合性が取れないと不公平に感じる
こうしたデメリットを回避するために、企業には以下のような取り組みが求められます。
〇収入減への配慮
→基本給の設計や成果連動型の手当を取り入れるなど、短時間勤務でも生活の安定を保てる賃金体系を工夫することが重要です。給与形態や手当に関しては、従業員が納得できるよう事前に説明をしておきましょう。
〇スキル習得・キャリア支援の充実
→ワークシェアリングによって業務が限定されても定期的な研修や社内勉強会への参加を促し、キャリア形成が停滞しないようスキル習得の機会を設けましょう。昇進やキャリアアップの選択肢を閉ざさず、社内公募や柔軟な異動制度を設けることでキャリア形成を支援できます。
〇公正な処遇・評価制度を整備する
→労働時間の長さにかかわらず成果やスキルを適切に評価できる人事制度を設けることで、不公平感を防ぎモチベーション低下を防止します。
〇丁寧な説明と相談体制
→制度の内容や評価方法について、導入前に十分に説明を行い、導入後も相談窓口を設置して不安を解消できる仕組みを整えることが不可欠です。特に従業員が気にすることは、短時間勤務によってどの程度収入減に見舞われるかについてです。分かりやすい資料作成と説明をし、誠意ある対応を心がけてください。
従業員が安心して働ける仕組みを整えることは、ワークシェアリング制度の信頼性を高め、導入後のスムーズな定着につながります。
ワークシェアリングの導入は単なる労働時間の調整ではなく「従業員が安心して働くことができる仕組み」として運用することが成功のカギとなります。
ワークシェアリングの導入手順
ワークシェアリングを成功させるには、単に形式的に導入するのではなく、自社の現状と目的に合わせて設計することが不可欠です。現場の実態を正しく把握し、労使双方が納得できる形で仕組みを整えることで、制度が定着して生産性や働きやすさの向上につながります。
導入の基本ステップは、以下の5つです。
ステップ1:現状の課題と規定の把握
ステップ2:導入目的を明確化
ステップ3:労使間での合意形成
ステップ4:制度設計と試行導入
ステップ5:効果測定・改善
本章では、では、それぞれのステップを具体的に解説していきます。
ステップ1:現状の課題と規定の把握
ワークシェアリング導入の第一歩は、現状の課題を数値化し、制度的な前提を整理することです。
具体的には以下の観点をデータ化・可視化しましょう。
・担当者や部署ごとの業務量(工数ベースでの集計)
・時間外労働の状況や長時間労働の発生要因
・属人化している作業や引き継ぎが困難な業務
・不要な作業や待機時間
・必要スキルや資格、対応できる従業員の範囲
現場の声を吸い上げるために、Googleフォームやスプレッドシートでの工数調査、アンケート、ヒアリング面談などを組み合わせると有効です。
また、業務実態の把握とあわせて以下の規定類も確認します。
・現状の人件費構造
・募集中の職種、採用計画
・就業規則、労使協定、雇用契約書の内容
制度面と実務面の両方を洗い出すことで「制度を導入したが社内規定と齟齬があった」といった失敗を未然に防ぐことができます。
ステップ2:導入目的を明確化
現状が把握できたら、ワークシェアリング導入の目的をはっきりさせましょう。目的が不明確なまま「とりあえず制度だけ」導入してしまうと、現場には負担だけが残り定着しません。
代表的な目的は次のとおりです。
・雇用維持:景気変動期でも雇用を守る
・人材確保:短時間勤務を希望する人材を活用
・健康確保:長時間労働を減らし従業員の健康を守り離職を防ぐ
・スキル継承:1人に偏ったノウハウをチームで分散
さらに、導入時には「数値目標」を設定することが望ましいです。
(例)時間外労働を半年で30%削減/短時間勤務者を全従業員の10%に拡大
目的が不明確なまま制度だけ導入してしまうと、現場に不満が残り、制度が形骸化してしまうケースも少なくありません。
ステップ3:労使間での合意形成
ワークシェアリングは、労使協定や就業規則の改定が関わるため、労使間の合意形成が制度定着のカギです。
早い段階から従業員代表や労働組合と話し合いを持ち、以下の論点を整理しましょう。
・対象範囲(部署・職種・雇用形態)
・運用開始のスケジュール
・賃金、手当、賞与の取り扱い
・評価制度や人材育成の考え方
・勤務時間短縮による社会保険・雇用保険への影響
・実務上の情報共有ルール
労働基準法第36条に基づく36協定や、労使委員会の審議といった法制度上の手続きを理解しておくことで、導入に必要な合意形成の流れを具体的に把握できます。
また、従業員向けには説明会・Q&A資料・動画マニュアルなどを準備し、透明性のある情報提供を行いましょう。給与の減少や役割分担の不公平感は、最も反発が起こりやすいポイントですので、重点的に説明する必要があります。
ステップ4:制度設計と試行導入
合意形成が整ったら、次は制度を具体的に設計し、いきなり全社導入せずパイロット的に試行しましょう。対象部門や職種を限定してモニター運用を行うと、制度の不具合をコンパクトに検証できます。
制度設計では、次の観点を整理しておきましょう。
・シフト設計(曜日、時間帯、在宅勤務の可否)
・引き継ぎのルール
・ITツールの導入(勤怠管理、プロジェクト管理、チャットツールなど)
・給与計算、勤怠管理の仕組み
・セキュリティ、情報管理体制
・副業や兼業の取り扱い(就業規則に明記するかどうか)
特に注意したいのは、最初から全社一斉に導入してしまい、現場が混乱して結局撤退してしまうケースです。そうした失敗を避けるためにも、まずは試行段階を踏んでから全社展開へ進むことが重要です。
ステップ5:効果測定・改善
ワークシェアリングの効果を確実にするためには、導入後の「振り返り」と「改善」が欠かせません。
試行期間中は人事・上長・現場の三者で定期的に振り返りを行い、当初の目的が達成できているかを数値や指標で確認しましょう。
たとえば、以下のような観点で効果測定を行うと有効です。
・残業時間や労働時間の削減度合い
・有給休暇取得率の改善
・従業員満足度や離職率の変化
・生産性(業務進捗や納期遵守率)の向上
・顧客満足度やサービス品質への影響
効果を測定したうえで、不安要素や改善点が見つかれば素早く制度に反映します。対象となった従業員からヒアリングを行い、業務の進捗や働きやすさに関する声を集めることも重要です。
そして、定期的なアンケートや面談を通じて、従業員の満足度と負担の両面を把握しながら制度を成熟させていきます。
最終的には、改善点を反映した「ワークシェアリング運用マニュアル」を作成し、社内に定着させましょう。
効果測定を軽視すると形骸化してしまいますが、PDCAを回すことで制度はより強固になり、企業と従業員の双方にメリットをもたらす持続的な仕組みとなります。
実際の運用までは事前準備や関係者との調整に労力を要しますが、情報共有や業務範囲の明確化、試行を通じた改善を重ねることで、企業の不利益を最小限に抑えた持続可能なワークシェアリングを実現できます。
そして、従業員のみならず、企業全体の生産性や顧客満足度の向上にも寄与するでしょう。
\パート・アルバイト採用のお悩みはありませんか?/
ワークシェアリングの事例紹介
日本では80年代後半から、ワークシェアリングに関する議論が本格化しました。円高による景気や雇用の低迷をきっかけに「ワークシェアリングに関する研究会」が発足。最終的には雇用の場は安定したため雇用の拡大に対してワークシェアリングは行われなかったものの、労働環境の改善として「長時間労働の是正」や「プライベート時間の確保」といった面で政策が行われました。
それから40年ほど経った現在では、少子高齢化や働き方改革への対応策として、企業にとって検討すべき制度のひとつと位置づけられています。
本章では、実際にワークシェアリングを導入した企業の事例から、その効果を見ていきましょう。
国内の事例
国内企業では、景気変動や多様な人材活用に対応するため、ワークシェアリングが実施されています。具体例として、以下の3つの企業をご紹介します。
1. トヨタ自動車株式会社(緊急対応型)
2. 株式会社パソナ(雇用創出型)
3. 株式会社ベネッセコーポレーション(多様就業型)
1. トヨタ自動車株式会社(緊急対応型)
2009年、リーマン・ショックによる世界的な経済不況の影響を受け、トヨタ自動車はアメリカの6つの工場において、12,000人以上の従業員を対象に緊急対応型のワークシェアリングを実施しました。具体的には、労働時間の削減・減給・賃上げ停止・早期退職制度の導入・生産ラインの稼働停止日の設定などの措置が取られました。
これらの対策により、雇用の維持と企業の安定を図りました。
2. 株式会社パソナグループ(雇用創出型)
パソナグループは、1987年に「ワークシェアリング」を設立し、主婦の雇用機会を拡大するためにジョブシェアリングやタイムシェアリングなどの新しい働き方を提案しました。その結果、働ける時間や環境に制限のある主婦が自分のライフスタイルに合わせて働けるようになりました。また、1983年には在宅勤務制度を導入しました。
就業を希望するすべての女性に対して、誰もが活躍できる機会を提供し、社内制度の充実や働きやすい職場環境づくりを推進しています。これらの取り組みは、ワークシェアリングの一環として、雇用の維持と創出に寄与しています。
出典:パソナグループ|女性の雇用創造
メリットの多い“女性従業員”を雇い入れませんか?▶女性採用のメリット13選!企業が取り組む施策と成功事例を解説
3. 株式会社ベネッセコーポレーション(多様就業型)
ベネッセコーポレーションは、育児と仕事の両立を支援するため、1992年に育児休業制度を改編し、育児と仕事の両立を支援するための育児時短勤務制度を導入しました。
この制度では、社員が育児休業(育休)からの復帰直後、通常勤務にスムーズに戻るための準備期間として、1時間または2時間の所定労働時間の短縮が可能となっています。
また、時短勤務者の両立支援施策として、ロールモデルの共有やワーキングマザー同士の情報交換、グループポータルサイトでの情報提供・交換、情報個別の育成・相談対応などを行っています。さらに、働く場所の柔軟性を高めるため、在宅勤務等の制度や環境作りも進めています。
出典:厚生労働省|多様な働き方の実現応援サイト|株式会社ベネッセコーポレーション|多様な正社員制度の導入事例|職務・勤務地・時間を限定した多様な正社員
ヨーロッパ諸国の事例
ワークシェアリングは日本でも注目されていますが、海外では既に多くの企業や国が制度を導入し、効果を上げています。
なかでも、日本よりも早くにワークシェアリングを導入し、成果を上げているのがヨーロッパです。ヨーロッパでワークシェアリングが導入され始めたのは1980年代のこと。現代では定着化が進み、国を挙げての政策として国民の働き方に良い影響を与え、多様性をもたらしてきました。
今回は、オランダとドイツで実際に行われたワークシェアリングの取り組みの詳細を紹介します。
1. オランダのワークシェアリング事例
オランダは、ワークシェアリングを通じてパートタイム雇用を大幅に拡大した国として有名です。
当時のオランダは深刻な経済危機と失業率の上昇に直面していました。そこで導入されたのが、“雇用創出型”のワークシェアリング。その転機となったのが1982年の「ワッセナー合意」で、政府・企業・労働者がそれぞれ財政改革や雇用確保、賃上げ抑制を受け入れる“三者合意”を成立させました。
短時間勤務の雇用を生み出して失業者が就業できるようにしたのです。
さらに、オランダ政府は90年代以降にパートタイム労働者に最低賃金を保障し、社会保険制度もフルタイム労働者と同じ「比例原則」に基づき統合。加えて、フルタイムからパートタイムへ移行する権利を認める法律も制定されました。
その結果、83年から96年にかけて新規雇用の約80%がパートタイムで創出され、就業者全体に占める割合は85年の22.7%から、97年には38%へと急増しました。そして、導入から約20年後、オランダの失業率は11.9%から2.7%へと大幅に改善しました。
こうした取り組みにより、オランダは「パートタイム労働者の均等待遇」が世界でもっとも普及した国と評価されており、柔軟な働き方と雇用拡大の両立を実現した好例といえます。危機的状況にあったオランダでの事例は、ワークシェアリングの代表的な成功例です。
2. ドイツのワークシェアリング事例
1993年、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)社では、従業員約10万3,000人のうち3万人ほどを整理解雇する方針が打ち出されました。これに対して労働組合が強く反発し、最終的に労使協定が成立。週36時間だった労働時間を28.8時間(80%)に短縮し、その分の賃金を削減する対策が講じられました。
つまりは、ワークシェアリングの“雇用維持型(緊急避難型)”が導入されたということです。
週換算で20%の賃金カットは従業員にとって大きな痛手となりますが、実際には年末手当の支給が行われたため、減収は約15%に抑えられたと推測されています。緊急避難型を講じた結果、大規模な人員削減を回避し、従業員3万人の雇用を守るという大きな成果をもたらしました。
また、ドイツでは景気後退期の雇用維持を目的に「クルツアルバイト(短時間勤務制度)」が広く導入されました。これは、従業員の労働時間を短縮し、減収分を国が補填する仕組みで、企業は人員削減を避けつつ雇用を守ることができます。さらに「労働時間口座制度※1」や「人生対応型労働時間※2」との組み合わせで繁忙期と閑散期の労働時間を調整しやすくし、従業員同士で仕事を分け合える環境が整備されました。
※1 労働時間口座制度|働いた時間をポイントとして自分の時間口座に入れることで、ためたり使ったりできる柔軟な働き方を支援するドイツの制度
※2 人生対応型労働時間|労働時間口座よりも個々人の希望に沿った労働時間で働く方法。企業によっては数百通りものシフトモデルがある
参考:ドイツ企業の働き方改革 ―労働時間柔軟化の新段階|日本政策金融公庫、第9回日韓ワークショップ報告書 ワークシェアリングの現状と課題:日韓比較|(独)労働政策研究・研修機構
ワークシェアリングに最適な人材は主婦・主夫層
ワークシェアリングは短時間勤務を前提とする仕組みのため、家庭と両立しながら柔軟に働きたい主婦・主夫層と非常に相性が良く、人材不足や長時間労働といった企業の課題解決にもつながります。
主婦や主夫を雇用することは企業にとってもメリットがあるので、多くの企業が採用ターゲットにしています。
【主婦・主夫採用のメリット】
・働く意欲のある層
→家計を支える目的で働く人が多く、求職活動に意欲的
・社会人経験が豊富でビジネススキルを心得ている
→過去に正社員などで働いた経験を持つ人材が多い
・スキルを持つ人材が多く即戦力になり得る
→ブランクがあっても実務経験があるため、一から教育する必要がなく負担が少ない
・応募~採用までにドタキャンされにくい
→マナーを心得た人が多く、選考の途中で音信不通になるケースが少ない
実際に、ビースタイルメディアが運営する「しゅふJOB」利用者にアンケートを行ったところ、以下の結果が得られました。
まずは「いつから働き始めたいか」についてのアンケート結果です。
出典:「しゅふJOB」を利用する求職者への独自調査(集計期間:2025年1月21日~2025年2月3日)
※3 調査概要下部記載
結果を見ると「いいところがあれば半年以内には働き始めたい(29%)」が最も多く、次いで「すぐにでも働き始めたい(20%)」「1カ月以内には働き始めたい(18%)」となりました。半数以上が早期就業を希望しており、企業側の即戦力ニーズともマッチしていることが分かります。
次に「仕事を探し始めてから応募までの期間」を問うアンケート結果です。
出典:「しゅふJOB」を利用する求職者への独自調査(集計期間:2025年1月21日~2025年2月3日)
※4 調査概要下部記載
結果は、1位「1週間以内(27%)」、2位「1ヶ月以内(21%)」、3位は「3日以内(16%)」でした。
アンケート結果からも分かるように、主婦・主夫層は「条件が合えばすぐにでも働きたい」と考える人が多く、育児や介護と両立しながら短時間勤務を希望する傾向があります。
そのため、短時間労働を前提とするワークシェアリングとの親和性は非常に高いといえます。
「しゅふJOB」は、主婦・主夫層に特化したアルバイト・パート求人サイトです。短時間勤務や柔軟シフトの求人を多く掲載しており「第3回日本サービス大賞」において『厚生労働大臣賞』を受賞した実績もあり、社会的にも高い評価を得ています。
短時間勤務の募集には「しゅふJOB」での募集が効果的です。ワークシェアリング導入を検討する企業にとって「しゅふJOB」は短時間勤務希望者と出会える最適な採用チャネルです。
掲載4日で10名の応募実績!求人サイト「しゅふJOB」の資料をダウンロードする
「ワークシェアリング」に関するよくある質問(FAQ)
ワークシェアリングを導入しようとする企業や、人事・労務担当者が実務上で抱きやすい疑問をまとめました。
制度を導入する際の検討材料として、参考にしてください。
Q1.ワークシェアリングと時短勤務(短時間勤務)の違いは?
A. 時短勤務は育児や介護、心身の不調など、従業員個人の事情に応じて労働時間を短縮する制度であり、対象者は限定されます。一方、ワークシェアリングは業務全体を複数人で分担し、組織として雇用維持や人材確保を図る仕組みです。
結果として短時間勤務者が増える点は共通しますが、設計の単位(個人か組織か)と適用する目的が異なります。
Q2.ワークシェアリングはどんな業種に向いている?
A. 小売・外食・宿泊・コールセンターなど、需要の変動に応じて人員を柔軟に配置できる業種で導入しやすい傾向があります。ほかにも、製造業・物流・医療・バックオフィスなど、時間帯ごとで業務量が偏る分野でも有効です。
なかには、人員配置や教育制度を工夫すれば導入できる業務もありますが、導入のカギは業務を時間単位・タスク単位に分解できるかどうかにあります。
Q3.ワークシェアリングの対象となる従業員の給与は減少する?
A. 労働時間が短くなれば、賃金を減少させる場合があります。そのため、企業は手当・インセンティブ・スキル評価を組み合わせ、従業員のモチベーションを維持できるよう設計する必要があります。
また、国へ助成金を申請して雇用の維持・拡大に努めることも可能です。
助成金などの公的支援や、繁忙期には特別手当や時給アップを設定して収入減を補う仕組みを整えるなどし、年収の大幅な変動を抑える対策をしましょう。
Q4.ワークシェアリングを導入した場合でも副業や兼業は可能?
A. 原則として可能です。ワークシェアリングは労働時間を分け合う仕組みのため、余剰時間を副業・兼業・学習などに充てやすくなります。ただし、就業規則や競業避止義務、労働時間の通算による健康確保の観点には注意が必要です。
企業は副業や兼業の方針を取り決めて就業規則に明確に記述し、希望者からの申告や体調管理に備えましょう。
Q5.助成金・補助制度はどんな種類がある?
A. 景気後退期の雇用維持には、雇用調整に関連する公的支援を活用できる場合があります。以下は、2025年最新のワークシェアリングで活用できる主な助成金です。
・雇用調整助成金:経済上の理由により、事業縮小を余儀なくされた事業主が、雇用維持を図るために要した費用を助成する制度
・早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース):事業縮小等により離職を余儀なくされた労働者に対して、再就職支援や教育訓練を実施した企業に助成する制度
・人材開発支援助成金:職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるために職業訓練等を計画に沿って実施した場合、その費用や賃金の一部を助成する制度
・働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース):労働時間の削減や年次有給休暇の取得、ソフトウエアのや設備の導入など、生産性の向上や労働環境の改善をした中小企業事業主に助成する制度 (注)交付申請受付:2025年11月28日まで
対象要件や申請手続きは制度や時期により変動するため、厚生労働省など公的機関の最新情報を必ず確認してください。
参考:雇用調整助成金 |厚生労働省、早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)|厚生労働省、人材開発支援助成金|厚生労働省、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース) |厚生労働省
Q6.導入に必要な労使合意のポイントは?
A. 労使合意では、対象範囲・期間・賃金や手当・評価や育成方法・情報共有ルール・試行から本格導入への移行条件を明文化することが必要です。
特に、36協定や労使委員会での決議など法制度を踏まえた合意形成が求められます。合意形成の過程ではリスクと便益を対等に開示し、パイロット結果を共有することで、労使双方の理解と信頼を得られます。
Q7.緊急的に導入した場合、元に戻せる?
A. 可能です。試行や緊急導入の段階で、終了条件と元の勤務形態への復帰手順をあらかじめ定めておけば、混乱なく通常運用に戻せます。復帰時には、過去の勤務パターンや要員計画を即時に再開できるよう、データとマニュアルを整備しておくことが重要です。
Q8.社会保険や雇用保険への影響は?
A. 労働時間や賃金に変更が起きれば、社会保険や雇用保険の加入要件や保険料・給付に影響します。制度設計時に基準(所定労働時間・所定労働日数 等)を確認し、該当する従業員に対して「いつの給与から何の保険料が徴収されなくなったり金額に変更が起きるか」を、あらかじめ説明しておく必要があります。
誤った認識で処理を行うと給与計算システムのリカバリーや是正負担が大きくなるため、社会保険労務士など専門家に確認することも有効です。
Q9.主婦・主夫層はワークシェアリングに最適な人材?
A. 家庭との両立を希望する主婦・主夫は短時間勤務を希望するケースが多く、ワークシェアリングの仕組みと相性が良いと言えます。また、多くの主婦・主夫は社会人経験が豊富であり、即戦力として業務に貢献できます。そのため、既存社員との業務分担においても重要な役割を担うでしょう。
まとめ|ワークシェアリングを導入し人材活用と雇用維持を両立させよう
現代の企業においては、限られた人員を効率よく配置し、短時間かつ多様なシフトを組み合わせて働き手を増やすことが求められています。
ワークシェアリングは、一人当たりの労働時間を抑えつつ総労働量を確保できる制度であり、採用プールを広げる有効な手段です。
一方で、賃金や社会保険への影響、労使合意の形成、制度終了時の復帰条件など、設計時に注意すべき点も多く存在します。企業はメリットとデメリットを十分に理解したうえで、パイロット試行や効果測定を経て慎重に進めることが大切です。
特に、家庭との両立を希望する主婦・主夫層は短時間勤務との親和性が高く、ワークシェアリングにはうってつけな人材です。主婦・主夫の採用で「しゅふJOB」を活用すれば、柔軟な働き方を希望する人材を効率的に採用できます。
業務や時間帯に応じたきめ細かな人員配置をすることで、サービス水準とコストの最適化を両立できるのがワークシェアリングの強みです。自社の課題や目的を明確にしたうえで導入を検討してみましょう。
⇒「しゅふJOBサービス・料金表資料」を無料ダウンロード
\パート・アルバイト採用のお悩みはありませんか?/
※3
【調査概要】
調査期間:2025年1月21日~2025年2月3日
有効回答者数:1058人
調査対象:求人サイト「しゅふJOB」登録済みの求職者様
調査方法:Webアンケート
※4
【調査概要】
調査期間:2025年1月21日~2025年2月3日
有効回答者数:1191人
調査対象:求人サイト「しゅふJOB」登録済みの求職者様
調査方法:Webアンケート