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【9月8日更新】地域別最低賃金の全国一覧│企業が取るべき対策とは?

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【9月2日更新】地域別最低賃金の全国一覧│企業が取るべき対策とは?

最低賃金制度とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低限値を定めた制度で、雇用形態に関係なくすべての従業員に適用されます。

この記事では、2025年の地域別最低賃金の最新情報の紹介のほか、最低賃金の基礎知識、最低賃金の引上げによる企業への影響とその対策、人材を募集する際に気を付けるべき点、最低賃金を下回っていた事例などをご紹介します。

パートやアルバイトの時給設定をするとき、ぜひ参考になさってください。

▶【令和7年度】地域別最低賃金リストを無料ダウンロードする

 

【目次】

2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金の金額と施行日一覧

2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金の目安一覧

2025年度の最低賃金は「全国加重平均66円アップ」という目安が提示されました。過去最大の引上げ額となっています。

この章では各都道府県ごとに、2025年の最低賃金の答申状況の最新版を一覧でまとめています。(※2025年9月8日現在)

まず、厚生労働省が令和7年8月4日に発表した2025年のABCランクごとの引上げ額は以下の通りです。

ランク 都道府県 2025年引上げ額
(目安)【円】
A
(6都道府県)
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 63円
B
(28都道府県)
北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、
長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、
広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡
63円
C
(13都道府県)
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、
宮崎、鹿児島、沖縄
64円

下記では各都道府県の2025年最新の最低賃金の一覧・施行日と2024年の最低賃金との比較をまとめました。(※2025年9月30日現在の情報)

都道府県名 2025年最低賃金
円)
2024年最低賃金
(円)
2025年引上げ額
発効予定年月日
北海道 1,075 1,010 65 2025年10月4日
青森 1,029 953 76 2025年11月21日
岩手 1,031 952 79 2025年12月1日
宮城 1,038 973 65 2025年10月4日
秋田 1,031 951 80 2026年3月31日
山形 1,032 955 77 2025年12月23日
福島 1,033 955 78 2026年1月1日
茨城 1,074 1,005 69 2025年10月12日
栃木 1,068 1,004 64 2025年10月1日
群馬 1,063 985 78 2026年3月1日
埼玉 1,141 1,078 63 2025年11月1日
千葉 1,140 1,076 64 2025年10月3日
東京 1,226 1,163 63 2025年10月3日
神奈川 1,225 1,162 63 2025年10月4日
新潟 1,050 985 65 2025年10月2日
富山 1,062 998 64 2025年10月12日
石川 1,054 984 70 2025年10月8日
福井 1,053 984 69 2025年10月8日
山梨 1,052 988 64 2025年12月1日
長野 1,061 998 63 2025年10月3日
岐阜 1,065 1,001 64 2025年10月18日
静岡 1,097 1,034 63 2025年11月1日
愛知 1,140 1,077 63 2025年10月18日
三重 1,087 1,023 64 2025年11月21日
滋賀 1,080 1,017 63 2025年10月5日
京都 1,122 1,058 64 2025年11月21日
大阪 1,177 1,114 63 2025年10月16日
兵庫 1,116 1,052 64 2025年10月4日
奈良 1,051 986 65 2025年11月16日
和歌山 1,045 980 65 2025年11月1日
鳥取 1,030 957 73 2025年10月4日
島根 1,033 962 71 2025年11月17日
岡山 1,047 982 65 2025年12月1日
広島 1,085 1,020 65 2025年11月1日
山口 1,043 979 64 2025年10月16日
徳島 1,046 980 66 2026年1月1日
香川 1,036 970 66 2025年10月18日
愛媛 1,033 956 77 2025年12月1日
高知 1,023 952 71 2025年12月1日
福岡 1,057 992 65 2025年11月16日
佐賀 1,030 956 74 2025年11月21日
長崎 1,031 953 78 2025年12月1日
熊本 1,034 952 82 2026年1月1日
大分 1,035 954 81 2026年1月1日
宮崎 1,023 952 71 2025年11月16日
鹿児島 1,026 953 73 2025年11月1日
沖縄 1,023 952 71 2025年12月1日
全国加重平均 1,121 1,055 66 2025年10月1日

出典:厚生労働省/令和6年度地域別最低賃金額改定状況 厚生労働省/令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧

最低賃金の基礎知識

最低賃金の基礎知識

事業者にとっても労働者にとっても、最低賃金の問題は常に大きな関心を持たれています。しかし、詳しい内容を問われると、意外に答えに窮する方も多いのではないでしょうか。

最低賃金に対する正しい知識がないばかりに不利益を被ったり、罰則を受けたりといったことは絶対に避けたいもの。

本項では、最低賃金についての基礎知識を簡潔に解説いたします。最低賃金という制度を理解する一助となれば幸いです。

最低賃金とは何か

最低賃金とは、労働の対価として得る賃金の最低額を時給換算したもので、法律により保証されています。事業所の規模や雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用されるものです。

たとえ雇用する側とされる側の間に合意があったとしても、最低賃金を下回る金額での雇用契約は無効となります。労働者に対して最低賃金よりも安い金額しか支払わなかった場合に、雇用主は最低賃金額との差額を支払う必要があります。

最低賃金の見直しは毎年行われており、都道府県によっても金額が細かく異なります。最低賃金未満での雇用を防ぐため、職場の所在地における最低賃金を常にチェックする習慣をつけておくことをおすすめします。

「地域別」と「特定(産業別)」2つの最低賃金

「地域別最低賃金」と「特定(産業)最低賃金」の2種類があるのをご存知でしょうか。以下で詳しく解説していきます。

●地域別最低賃金

各地域で働く人の「生計費」や「賃金」、使用者(雇い主)の「通常の支払い能力」などをトータルで考慮して、47都道府県のごとに決められています。

決定する流れとしては、厚生労働省の「中央最低賃金審議会」という組織で、研究者代表、労働者代表、使用者代表の人たちが集まり、金額改定の「目安」を示します。

次に、各都道府県にある「地方最低賃金審議会」に持ち込まれて、その額が妥当かどうかを審議します。最終的には、各都道府県の労働局長がその意見をまとめ、正式な最低賃金を決めます。

ちなみにここで言う、最低賃金には、ボーナスや臨時手当、残業代は含まれません。

●特定(産業別)最低賃金

特定(産業別)最低賃金とは、特定の産業で働く労働者のために、地域別最低賃金よりも高い金額が定められた最低賃金のことです。

「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の両方が設定されている仕事では、金額が高い方が適用されるため注意が必要です。

全国で224件(令和7年3月末現在)の最低賃金が定められています。設定される産業の新設や改廃に関しては、役所よりも労使にイニシアティブがあります。

主に以下のように製造業が中心となっており、地域によって適応される業種が異なります。

・鉄鋼業
・電子部品、デバイス、電子回路
・自動車関連業
・機械器具製造業など

参照:特定最低賃金について│厚生労働省

最低賃金の適用対象とは?

地域別最低賃金はその地域で働くすべての労働者に適用され、業種や雇用形態による違いはありませんが、特定最低賃金は特定の産業に従事する人に適用されます。

ただし、特定最低賃金には適用の対象外となる労働者がいるため注意してください。具体的に、特定最低賃金の対象とならないケースは以下のような場合です。

・18歳未満の労働者
・65歳以上の労働者
・雇用から一定期間未満で、技術習得中の労働者

最低賃金はいつ決まる?改定スケジュールの目安とは

最低賃金はいつ決まる?改定スケジュールの目安とは

最低賃金は毎年見直されていますが、そもそも最低賃金がどのようなスケジュールで更新されているのかをご紹介いたします。

【毎年7月下旬~8月上旬】引き上げ額の目安発表

厚生労働省の中央最低賃金審議会にて、毎年の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられ、その結果が公表されます。時期は毎年7月下旬~8月上旬ごろ。

各都道府県の引上げ額の目安については、A~Dに振り分けられます。<参照>令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について/厚生労働省


【毎年8月中頃】各都道府県で審議・答申

中央の目安を参考に、各都道府県の「地方最低賃金審議会」が、地域の経済実態に合わせて審議を行います。ここで最終的な改定額が決定され、都道府県労働局長に答申されます。

目安を上回る引き上げ額を答申する都道府県も少なくありません。


【毎年10月1日以降】最低賃金の改定実施

答申された金額が正式に決定・公示され、例年10月1日から順次、新しい最低賃金額が発効されます。

地域によって発行年月日が異なるので毎年チェックが必要です。特に求人を掲載している場合、最低賃金を1円でも下回った求人を掲載することは法律違反となり掲載の継続が出来なくなる場合もあるのでお気をつけください。

特に、扶養枠内で働く主婦・主夫の中には、賃金引き上げにより、扶養枠内を超えないように、労働時間を減らす方も出てくるため、主婦・主夫を採用している企業では、人手不足にならないよう、雇用管理に注意が必要です。

主婦・主夫採用に関しては「【採用担当者必見】主婦・主夫採用のメリットとは?採用成功のコツを徹底解説」」をご覧ください。

近年の最低賃金の動向は?

近年の最低賃金の動向は?

近年、最低賃金の引き上げ額が上昇しています。では、直近2年間の最低賃金をめぐる動きはどのようになっているのでしょうか。本項では、直近2年間の最低賃金の動向について解説いたします。

2023年度の最低賃金状況

2023年には、全国平均で43円の最低賃金引き上げ、全国加重平均額は1,004円と過去最大を記録した2022年をさらに上回る過去最大の引き上げ幅になりました。

物価上昇を背景に、1000円超えは初めてとなりました。

2024年度の最低賃金状況

2024年には、全国平均で51円の最低賃金引き上げ、全国加重平均額は1,055円と2023年を上回る過去最大の引き上げ幅でした。

特筆すべきは、中央最低賃金審議会が示した目安「50円」を、最終的に多くの都道府県が上回る答申を出した点です。これは、深刻な物価高騰に加え、記録的な水準となった春闘の賃上げの流れを、地域経済を支える中小企業やパート・アルバイト労働者にも波及させるべきという強い意志の表れと言えます。

特に地方では、賃金水準の低さが都市部への人材流出の一因となっていることから、地域経済を守るための「防衛的な賃上げ」の側面も色濃く反映された結果となりました。

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最低賃金の引き上げによる企業への影響とは?

最低賃金の引き上げによる企業への影響とは?

最低賃金の引き上げにより、企業にどのような影響が起こるのでしょうか。下記で企業が抑えておくべき最低賃金の引き上げの影響について解説していきます。

人件費が増える

最低賃金の引き上げによる企業の影響として、最も大きいのは人件費が高くなることではないでしょうか。

例えば、時給が50円上がると、フルタイムで働く従業員に対する企業の負担額は、1か月あたり約8,000円の増額となります。

人材確保が難しくなる

人材の確保が難しくなることも懸念されます。最低賃金の引き上げにより、他社も一律に賃を引き上げる必要があります。現在時給を高く設定していても、差別化ができず求人を出しても以前のように集まりにくくなるかもしれません。

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シフト調整が難しくなる

最低賃金が引き上がることで、扶養内で働く主婦・主夫、学生などは、扶養範囲を超えないように労働時間を減らす必要があります。

その結果、パート主婦・主夫、学生を多く採用している「家事代行」「スーパー」「飲食店」「オフィスワーク」などは、人手不足に陥る可能性があります。

正社員の負担が増える

上記でパート・アルバイトの労働時間が減ると、正社員が穴埋めする必要があります。

時間外労働や休日労働が増加することが予測でき、正社員の負担が増えてしまうでしょう。

従業員のモチベーション低下が懸念される

正社員、パート・アルバイト様々な雇用形態が存在する職場では、非正規従業員のみの賃金を上げる場合、正社員が不満を感じてしまう可能性もあります。

法律上しかたがないことであり、個々の能力とは無関係なものです。正社員の頑張りを認め、モチベーションを低下させないような対策が必要です。

最低賃金引き上げ対策で活用すべき助成金・補助金とは?

最低賃金引き上げ対策で活用すべき助成金・補助金とは?

最低賃金の引き上げは、人件費の増加に直結しますが、厚生労働省は影響を受ける中小企業に対する支援を行っています。以下が一例です。

①業務改善助成金
➁キャリアアップ助成金
➂ものづくり補助金・IT導入補助金

以下でそれぞれの助成金・補助金について詳しく解説していきます。この他にも様々な公的制度がありますので、自社に合ったものを賢く活用し、企業の成長につなげましょう。

①業務改善助成金:最低賃金の引き上げに最も直結

事業場内で最も低い時給で働く従業員の賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げると同時に、生産性向上のための設備投資などを行う場合に、その費用の一部が助成される制度です。最低賃金の引き上げ対応に最も直結した、使い勝手の良い助成金と言えます。

対象となる取り組み(例)
・POSレジシステムを導入し、会計業務や在庫管理を効率化する
・自動食器洗浄機や配膳ロボットを導入し、従業員の負担を軽減する
・勤怠管理システムを導入し、労務管理を効率化する
・荷物の運搬用にリフト付き車両を導入する など

対象事業者・申請の単位
・ 中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)でないこと)
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
・ 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
以上の要件を満たした事業者は、事業場内最低賃金の引き上げ計画と設備投資等の計画を立て、(工場や事務所などの労働者がいる)事業場ごとに申請いただきます。
引用:令和7年度業務改善助成金のご案内│厚生労働省

令和6年度からの主な変更点
・事業主単位での申請上限600万円までとなりました。
・大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外となりました。
・基準となる事業場内最低賃金労働者の雇用期間が、「3か月以上」から「6か月以上」になりました。
・事業完了期限が、2026(令和8)年1月31日※になりました。
※やむを得ない事由がある場合は、理由書の提出により、2026(令和8)年3月31日とできる場合があります。
引用:令和7年度業務改善助成金のご案内│厚生労働省

引き上げる賃金額や対象となる労働者数に応じて助成の上限額が変わります。まずは厚生労働省のウェブサイトで詳細を確認しましょう。

➁キャリアアップ助成金:パート・アルバイトの待遇改善に

パート・アルバイトといった非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための助成金です。最低賃金の改定は、既存従業員の待遇を見直す絶好の機会でもあります。

特に注目すべきコース:『賃金規定等改定コース』
パート・アルバイトなど、非正規雇用労働者の基本給を定めた賃金規定を3%以上増額改定し、その規定を適用した場合に助成が受けられます。最低賃金の引き上げをきっかけに、従業員のモチベーション向上と人材定着につながる賃金テーブルの見直しを行う際に、強力な後押しとなります。

また、キャリアアップ助成金の中でも特に利用の多い「正社員化コース」において、令和7年度から大きな変更がありました。新たに「重点支援対象者」という区分が設けられ、正社員に転換する従業員がこの区分に該当するかどうかで、助成額が大きく変わる仕組みになりました。

参照:キャリアアップ助成金のご案内 (令和 7年度)│厚生労働省

➂ ものづくり補助金・IT導入補助金:賃上げで採択率がアップ

これらの補助金は、革新的な製品・サービス開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)、ITツールの導入など、企業の生産性を向上させる大規模な取り組みを支援するものです。これらは直接的な賃上げの補助金ではありませんが、申請時に従業員への賃上げ計画を策定・表明することが「必須要件」または「加点項目」になります。
最低賃金の引き上げという社会的な要請を、自社の大きな成長投資を実現するための追い風として戦略的に活用できます。

参照:はじめてのもの補助│ものづくり補助事業公式ホームページ
   『IT導入補助金2025』の概要 │中小企業庁

【助成金以外】最低賃金の引き上げへの企業が取るべき4つの対策とは?

【助成金以外】最低賃金の引き上げへの企業が取るべき4つの対策とは?

最低賃金の引き上げは、企業に影響をもたらしますが、悪い影響ばかりではありません。この機会に対策を取ることで、効率化や人件費を抑えることができるかもしれません。以下で対策について詳しく見ていきましょう。

①最低賃金引き上げ前に人材を採用する

10月の最低賃金引き上げ前に、時給を上げる企業は多いでしょう。さらに採用市場の競争は激しくなり、優秀な人材の確保が難しくなることが予測されます。競合が最低賃金を引き上げる前に採用を進めておくことで、10月以降も余裕を思って採用活動を進められるでしょう。

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➁従業員の労働時間を見直す

最低賃金が引き上がることで、人件費は増加します。そこで見直せることは、残業代を減らすことです。

従業員に向けて定時退社を促す、定時になると自動でパソコンをシャットダウンする機能を投入するなどの対策ができます。また、従業員一人一人の勤怠情報を正確・効率的に管理できる勤怠管理システムを導入することも有効です。

➂従業員のスキル・生産性向上を意識する

時給がアップすることで、非正規雇用者のやる気は向上するでしょう。このタイミングで従業員のスキルを向上させることで、生産性や業績の向上が期待できるでしょう。

従業員に対する研修、教育体制を整えたり、セミナー参加、資格取得の支援など、従業員のスキルが向上できるような環境づくりが大切です。

④設備投資する

設備投資をし、業務効率化を図り人件費を抑えることも有効な手段の一つです。

近年、スーパーやコンビニでのセルフレジや、労務管理システムなどの導入によって従業員の労働時間の短縮に繋げている企業も多く存在します。

最低賃金改定で気をつけるポイントは?

最低賃金改定で気をつけるポイントは?

労働者を雇う際には最低賃金制度を遵守する必要がありますが、具体的にどのような点に注意すべきなのでしょうか。本項では、最低賃金改定の際に雇用者側が注意すべきポイントについて解説いたします。

最低賃金が適用される賃金とは?

最低賃金とは、支払う賃金の総額に対して適用されるのではなく、毎月支払う基本的な賃金に適用されます。以下に示すような各種手当や賞与を除いた額に適用されるので、誤解しないよう注意が必要です。

・時間外手当や休日手当、深夜手当などの割増賃金
・役職手当や営業手当、住宅手当など、会社が任意で支給する手当
・業績賞与や決算賞与などのボーナス

最低賃金を支払っているかの確認はどうする?

雇用している労働者に対して、実際に最低賃金以上の金額を支払っているかを確認するためにはどうすれば良いのでしょうか。賃金の形態別に具体的な確認方法を解説します。

・時給で支払う場合の計算方法

時給で賃金を支払う場合の確認は簡単です。支払う時給が最低賃金の時間額を下回らないようにしてください。
・時間給≧最低賃金額(時間額)

・日給で支払う場合の計算方法

日給で支払う場合は、日給を1日の所定労働時間で割った額が、最低賃金時間額を下回っていないかを確認します。日給の額が規定されている「特定最低賃金」が適用される労働の場合は、定められた日給額を下回っていないか確認しましょう。
・日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

・月給で支払う場合の計算方法

月給で賃金を支払う場合は、月の平均所定労働時間が定められているはずです。月給を1ヶ月の平均所定労働時間で割り、その額が最低賃金時間額を下回っていないか確認してください。
・月給÷1ヶ月月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

・出来高払いや請負制の場合の計算方法

歩合給の営業社員やタクシー運転手といった出来高払いの仕事や、一定の作業に対して価格契約する土木・建築などの請負制などでは以下のように考えます。

それぞれの制度で算出された賃金総額を総労働時間で割ることで、1時間あたりの賃金に換算します。そこで割り出された額が、最低賃金の時間額を下回らないよう注意が必要です。

以下の例は、歩合給制の場合の換算方法です。

□□県のタクシー会社で働く労働者Cさん(□□県の最低賃金は、時間額950円。)

あるM月の総支給額が177,450円であり、そのうち、歩合給が168,000円、時間外割増賃金が6,300円、深夜割増賃金が3,150円。

なお、Cさんの会社の1年間における1箇月平均所定労働時間は月170時間、M月の時間外労働は30時間、深夜労働が15時間。

Cさんの賃金が最低賃金額以上となっているかどうかは次のように調べます。

(1) Cさんに支給された賃金から、最低賃金の対象とならない賃金を除く。除外される賃金は、時間外割増賃金、深夜割増賃金であり、

177,450円-(6,300円+3,150円)=168,000円

(2) この金額を月間総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額と比較する

168,000円÷200時間=840円<950円

となり、最低賃金を下回ることになります。

参照:厚生労働省「最低賃金以上かどうかを確認する方法」

最低賃金を下回っていた?!よくあるパターン

最低賃金を下回っていた?!よくあるパターン

最低賃金を気にしていたはずなのに、実際には下回っていた?!ということが起こってしまうことがあります。以下にあてはまったら要注意!です。

雇用形態ごとに違うと思っていた

最低賃金は、職業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くパートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態のすべての労働者に適用されます。

試用期間は別だと思っていた

試用期間中も最低賃金は例外ではありません。

ただし、使用者より申請のあった業種または職種の労働者の賃金水準について、減額する合理的な理由がある場合のみ「減額特例」の許可の対象となります。

労働者が「減額特例※」が適用される期間は最長で採用から6ヶ月以内で、特例許可申請書を都道府県労働局長へ提出し許可を受けられれば、最低賃金より20%減額した給与を支払えます。

ただし、過去の統計を見ると減額特例の申請を行った使用者はなく、労働局長からの許可も当然ありません。

※減額特例
最低賃金の減額特例が適応される労働者は以下になります。
1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
2. 試の使用期間中の者
3. 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定のもの
4. イ 軽易な業務に従事する者
5. 断続的労働に従事する者 <参照>最低賃金の減額の特例許可申請書様式/厚生労働省

出来高払いなので、関係ないと思っていた

出来高払制によって計算された賃金の総額を、賃金算定期間において出来高払制で働いた総労働時間数で割った金額が、時間当たりの換算額となります。

例えば、出来高払制で総労働時間40時間で30,000円の賃金を支給した場合は、35,000÷40=時間給換算875円です。<参照>最低賃金額以上かどうかを確認する方法/厚生労働省

最低賃金についての注意事項とは?

最低賃金についての注意事項とは?

雇用主は、最低賃金法に違反していないかどうかを十分に注意する必要があります。また、労働者も自分が最低賃金未満で働いていることに気づいていないケースがあるため、一度は確認すべきでしょう。

本項では、最低賃金について注意しておきたい3つのポイントについて解説いたします。

最低賃金法違反にはペナルティがある

最低賃金法に違反している場合には労使契約は無効とされ、最低賃金と同額の定めをしたものとみなされることが最低賃金法で規定されています。

最低賃金未満の賃金しか支払っていなかった場合は、最低賃金との差額を使用者は労働者に支払わなくてはなりません。

また、最低賃金法には罰則規定があり、地域別最低賃金未満の場合は50万円以下の罰金産業別最低賃金未満の場合は30万円以下の罰金を支払うことが定められています。

最低賃金をこまめにチェックする

最低賃金は、最低賃金審議会により毎年審議されており、毎年10月1日以降を目処に見直しが行われる可能性があります。

そのため、使用者と労働者の双方が最低賃金に変更がないかどうかを都度チェックすることが大切です。

労働者に周知する義務がある

使用者は最低賃金に関して、以下のような内容を労働者に周知する義務があります。

・最低賃金が適用される対象者の範囲
・最低賃金の額
・最低賃金の対象外となる賃金
・最低賃金の効力発生日

使用者は、事業所内の目につきやすい場所に掲示するメールや書面を用いて全ての従業員に通知するなど、労働者がすぐに最低賃金の内容を把握できるように配慮しなくてはなりません。

周知義務を怠った場合には、使用者に対して30万円以下の罰金が規定されているため、十分に注意する必要があるでしょう。

最低賃金に関するよくある質問

最低賃金に関するよくある質問

Q1. 派遣社員の場合、どこの最低賃金が適用されますか?

A1. 派遣先(実際に就業する事業所)の所在地の最低賃金が適用されます。 例えば、東京の派遣会社に登録していても、勤務先が群馬県の事業所であれば、群馬県の最低賃金が適用されます。

Q2.通勤手当、ボーナス、家族手当は最低賃金の計算に含めますか?

A2. いいえ、含めません。 最低賃金の計算対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金(基本給や固定手当など)です。通勤手当、精皆勤手当、家族手当、そして残業代や賞与(ボーナス)などは計算から除外されます。

Q3. 試用期間中も最低賃金は適用されますか?

A3. はい、原則として試用期間中の労働者にも最低賃金は適用されます。ただし、都道府県労働局長の許可を条件に、最低賃金を最大20%減額できる「減額特例」がありますが、無条件に減額できるわけではありません。

最後に

2025年度の最低賃金改定は、過去最大の上昇額となり、多くの企業にとって人件費の増加という課題をもたらします。しかし、これは同時に、自社の生産性を見直し、従業員の待遇を改善し、より魅力的な職場を作るための絶好の機会でもあります。

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この記事の執筆者

株式会社ビースタイルメディア

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この記事の監修者

石橋聖文

株式会社ビースタイルメディア 代表取締役。1982年生まれ。立教大学卒業後にビースタイルグループに新卒一期生として入社。同社にて約17年に渡り女性のライフステージに合わせた働き方の支援と企業の人材不足の解消やコスト削減、生産性向上を実現する複数のサービス運営・事業立ち上げを経験。

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